騒乱"メイヘム"計画
デヴィッド・フィンチャー監督が「セブン」に続き再びブラッド・ピットとダッグを組んだ90年代を代表するカルト作品。
20年も前の作品とは思えない、今もなお色褪せない類い稀な映像センスとメッセージ。資本主義を嘲笑い、大量消費社会を痛烈に批判する今作は現代社会にも通ずるものがある。
そして何より、強烈なインパクトを残すのがブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンの存在だ。
世の中を皮肉り、何処にも属することの圧倒的な"個" であるタイラーは、まるで人間の本能をさらけ出したような男である。彼の中には理性も社会性も存在しない。
一方で、エドワード・ノートン演じるもう1人の主人公は紛れもなく"僕ら"そのもの。
食いつなぐために仕事をし、ただ消費する毎日。個のアイデンティティーは失われ、生きているとも死んでいるとも言えず、ぼんやりと日々を過ごすだけ…。
そんな僕らにタイラーは警告する。
「お前は物に支配されている」
「お前らは歌って踊るだけのクズだ」
「テレビは君も明日は億万長者かスーパースターだと嘘をつく。その現実を知ってムカついてる」
思わずドキッとさせられる。目の前にある倫理観がグラグラと揺らぎはじめる。
そして同時に心の奥底に眠っていた本能が刺激される。誰もが潜在的に持っている反抗心や暴力性が呼び起こされるようだ。
そしてタイラーは囁くそれを解き放てと!
久しぶりに見て思いましたが、まったくとんでもない映画ですね。これは。
公開当時、評論家たちからの評判があまり良くなく、ショーレースにも引っかからなかったのも頷ける。
悪い影響を受けちゃう人も少なからずいたんではないかな?それほど衝撃的で影響力のある作品だと思います。
面白かったのは、自宅のボロ屋でタイラーが鼻の頭を指で弾きながらカンフーの真似事をしていたシーン。
まさかその20年後、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」でブラピがブルースリーをボコボコにするとは思いもよらなかったですね…(笑)。