社会のダストダス

ファイト・クラブの社会のダストダスのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.8
ライフスタイルの奴隷たちによる“レリ・ゴー”。20年前の劇場公開時はそれほどのヒットはしていなかったという本作、最高に変だけど痛快それでいて考えさせられる映画。最近の自分の生活がこの映画のエドワード・ノートンのようになりつつあるからか、初めてこの映画を観たときよりもブラピの言葉が刃物のように刺さるようになってきた。
映画の例えを使うならば、月曜日、火曜日、水曜日… 曜日をめくるたびにコピーのコピーのコピーのように感じてくる。

ブラピ演じるタイラー・ダーデンのカリスマ性という表現では足りない気がする、とにかく強烈な格好良さ。タバコを吸っていても、酒を飲んでいても、殴られていても、ヤっていても何をしていても格好良い。例え自分が特別な人間じゃなくてもこんな男が隣にいれば万能感に満たされるのかもしれない。

序盤随所に挿入されるサブリミナル効果をはじめ、会話の節々などこの映画の真相を明示する伏線は嫌らしいほどに散らばっていたのだが… まったく気づかなかった、今ではそれほど珍しくもない演出のはずなんだが。
ラストの二人の対峙からエンドロールまでの流れは、自分映画史の殿堂入りの神シーン。

タイトルとイメージビジュアルからボクシングの映画だと勘違いされている方が結構いるみたいなのが勿体無い。“殴り合い”ではなく“殴られ愛”から始まったカルト集団を描いた社会派サスペンスというのが個人的にはしっくりくるジャンルだけど、迂闊に他人に薦めるには危険な劇薬でもあるかもしれない。