hikarouch

ファイト・クラブのhikarouchのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
3.5
本作は、タイラーの言動が当時の男子中高生に大きな衝撃と共感を与え、時を経てオジサンになった彼らから今なお絶大な支持を得ている。ように感じる。

ぼくは多分当時レンタルビデオで見たんだけど、友達と一緒に見ていたためあんまり真剣に見なかったと思う。だから見た気になっていたけど、今回あらためてそういう映画だったんだと気がつくことが多かった。

フィンチャーとんがってるなーという第一印象。演出にしろ衣装にしろセリフにしろ、全てがコテコテの濃い味で、後年のミニマリズムとさえ思えるような作風とはかなり違って面食らう。

ブラピ演じるタイラーという男の言動が当時の若者の心を鷲掴みにしたようだが、要するに彼の言ってることって、「てめえの頭で考えて、今やりたいことをやれ。」ってことだよね。それ自体はまあ異論ない。ただ彼がそのたとえ話として出すIKEAだとかスタバだとかを、たとえ話ということがわからずに目の敵にしたり、バカにしたりするのは違うぞとも思う。そこんとこてめえの頭でよーく考えろよ。それは、フェラーリでもエルメスでもなんでもそうよ。タイラーの物言いが極端に断定的、ジャッジメンタル過ぎるので、そういう勘違いが生まれるのかなとも思う。
それに、タイラーが先導する悪ガキ軍団がやっている、無関係な人たちへの暴力やヴァンダリズムは、どんなカッコいい理屈を並べてもサイテーだということ。こいつらがこれをやっている以上、オジサン全く共感できないナ。

おそらくこれ高校生のときに真剣に見ていたら、心わしづかみにされて今なお絶大支持オジサンになっていた気がする。ブラピは問答無用にカッコいいし(なにあのバキバキの体)、エドワード・ノートンの作品ごとに豹変する変幻自在の演技は当時めちゃくちゃオシャレだったし。(アメリカンヒストリーXと今作がたしか撮影時期が近かったんだよね。なつかし。)
映画に仕組まれた強烈な仕掛けや、暗示やメタファーの数々も噛めば噛むほどに味が出るし、なにより、「てめえの頭で考えて、今やりたいことをやれ。」なんて最高やん。

ただ逆にこの歳になって、この映画を初めてみて心奪われてたらヤバいかなとも思うので、ぼくもそれなりにちゃんと大人になれてたということでしょうか。

ちなみに、悪ガキ軍団がレンタルビデオ屋でやってるイタズラはあれ今の若者はわからないだろうなと思った。ビデオテープは磁石で中身壊れちゃうんだよね、磁気テープだから。なつかし。


おお!これがレビュー600本目!やったー!
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