deenity

悪人のdeenityのレビュー・感想・評価

悪人(2010年製作の映画)
3.0
見終わって気づきましたがこれ『怒り』の李相日監督の作品なんですね。どうりでタイトル以上に重いわけです。

メインとなるのは親に捨てられ祖母と共に暮らす妻夫木といい年になってもいまだ結婚の臭いすらしない深津絵里の二人。それプラスアルファで満島ひかりやら樹木希林、柄本明、岡田将生といった人物のエピソードがある感じでしょうか。

とりあえずイメージとして抱いたのは、登場人物の多くが心にぽっかり穴が空いている人ばかりということ。だからどこか孤独で、それなのに心の拠り所を掴めない人ばかり。
満島ひかりはそれ故にイケメン高ステータスの男を求め、岡田将生はそんな女を弄び蔑むことで自己の面子を保っている。
妻夫木と深津はそんな自分たちを補完しあっている。(深津側の根拠はやや浅いが)

それが愛であり、その愛は恋だろうと家族だろうと関係なく、誰かを思うこと。誰かの幸せを望むこと。そういう思いを持てた者は表向きには悪人と言えど悪人には見えず、表向きには殺していない点では善人だが心の底から悪人なのはやはりこういう奴なのだと思えてくる。
柄本明の言葉、樹木希林の行動は鉛玉のように重い。

パッケージ写真にもなっている二人の写真。暗めの青と鮮やかな赤の服を着た二人。単純な男女の対比以上に、愛という生きる希望が人生に絶望した男を温かく包むメタファーに思えて仕方がない。
deenity

deenity