カテリーナ

悪人のカテリーナのレビュー・感想・評価

悪人(2010年製作の映画)
3.6
李相日という監督

彼の作品はどれも心を鷲掴みにされたまま
激しく揺さぶられるものが多い
はじめに『フラガール』で南海キャンディーズのシズちゃんの鼻水垂らしながらの泣きの演技と 田舎の窮屈さ 閉塞感 そして蒼井優のなんとも言えない表情を浮かべた圧巻のパフォーマンス にかなり
揺さぶられた
次の『悪人』では 主役の二人の刹那的運命的な顛末の他にも その2人を巡る 殺人事件の被害者やその遺族 加害者の家族 か弱い老人を襲う マスコミ関係者 など 弱者をいたぶる者への憎悪が爆発した いくつかの
エピソードが 観客から大粒の涙を絞りとった
しかし、感情に流された上に目隠しをされて 大事な部分は見えなかった 嫌、見ようとしてなかった事に気付いた それは 今作のその部分を非常に的確にロジカルに納得させてくれた批評をyoutubeで聞いたからだ

『怒り』を見た時はこれ以上完璧な作品は
ないだろうと唸ったものだが そこまでの道程は 監督自身が発展途上だった事も証明している 本数を重ねるごとに 世に出す作品と共に成長 進化を遂げていたのだ
初めから 完璧な人間などいないのと同時に
監督も然り 映画を愛し 作品を愛でる私にとって 監督とは絶対的な存在であり
まして 『怒り』の李相日監督は日本の監督の頂点 1、2を争うほど(好き)だったので 欠点などあり得ないと思い込んでいた 彼のこの指摘は 眼から鱗であった

感情を刺激する事を重要視する余り
この作品の大事なテーマ性に破綻を生んでしまった とパーソナリティは指摘した
具体的には岡田将生が被害者である満島ひかりを車から蹴り出すという暴挙を働き その事について 全く反省の色を見せず 暴言を吐き 警察に捕まる時マザコン丸出しで
お母さん助けてと喚き散らす など 彼を100% 悪として描いた事で テーマ性が崩れてしまったと言うのだ 『悪人』として描かれる 妻夫木聡の 危うい人間性 正しい事をしようとしても 裏目に出てしまい 暗い性格が 相手に嫌悪感を持たれ どこまでも負の
印象しか与えられない 本当は助けようとしただけなのに 妻夫木聡の持つ悪人と決めつけるには 余りにも不幸な資質に対して
完全無欠な悪を岡田将生に 体現させてしまったのだ
ただ、感情に流されて 普段から 監督の一部の心無い若者に対する 侮蔑や嫌悪が表面化したと 納得もする
テーマ性に沿って 岡田将生を演出するなら
これは間違っていたかもしれない
パーソナリティの指摘で
見終わった後になんかモヤモヤする正体がわかったような気がした

とは言え 人間の負の部分を真摯に見つめ
それを俳優を通して 極限まで追い詰めて
絞り出した演技を 切り取り 作品を紡いでいく手法で見せた 『怒り』が李相日監督の
最高傑作なのは間違いなく それを超える
作品も 心待ちにしていることにかわりはないのだ