シンタロー

愛を弾く女のシンタローのレビュー・感想・評価

愛を弾く女(1992年製作の映画)
4.0
フランスの名匠クロード・ソーテの傑作。弦楽器職人のステファン。腕は確かだが、内向的で感情表現が苦手。友人マクシムが社長を務める弦楽器工房で長らく仕事を共にしてきた。マクシムは社交的で接客もスマート、誰からも好かれ、2人は仕事以外では干渉しない、良い関係を築いてきた。マクシムは結婚しているが関係は冷めていて、今は才色兼備、将来有望なヴァイオリニスト、カミーユと交際している。カミーユからヴァイオリンの調整を依頼され、担当することになったステファン。ステファンの繊細な技術、演奏中に向けられる眼差しに、徐々に心惹かれていくカミーユだったが…。
これはステファンの性格について、いろいろな解釈がありますね。中にはゲイなのでは…という方もあるようですが、観る方に委ねられているところがあると思うんで、正解ってないんじゃないかと思ってます。自分は彼が人との対立を避けたり、深入りすることから逃げるあたり、一種のコミュ障なのかと思いましたが、話し嫌いな感じはないし、孤独を好んでるわけでもないし、難しいですね。映画の原題はまさに彼の[心]だと思うんで…当時多かった「〜の女」「〜する女」みたいなのを狙ったんだと思うけど、この邦題は違うでしょ。
ダニエル・オートゥイユはポーカーフェイス過ぎるこの役はかなり難しかったと思うのですが、繊細な表情で素晴らしいお芝居。当時私生活でも交際していたエマニュエル・ベアールがヒロイン。当時の彼女はまさに旬で、ドヌーヴ、アジャーニの後継者筆頭はこの人だと思ってました。美しいラヴェルの演奏シーンは見事だし、後半醜態を晒す激ぎれシーンも最高でした。マキシム役のアンドレ・デュソリエも渋い名演技で、この頃カッコいいなぁ。この3人の三角関係もののラブストーリーと思わせつつ、実は人間の深層心理を描こうとした深い作品…流石名匠!フランス映画の底力を感じる名作です。
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