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遊星からの物体X ファーストコンタクトのotomisanのレビュー・感想・評価

3.0
 寒さに強いのか、板張り一枚の基地にアムンゼンの時代から建ってるのかと思いきや、雪上車があるし空も飛ぶわけで。ただ2011年といえばアムンゼンの南極点到達から100年目、ノルウェー基地が舞台なのも顕彰のつもりならノルウェーとしては大迷惑だろう。
 アムンゼンが私人で探検していたのと異なり1980年代の観測事業は政府資金で活動する極地研究所の所管だから、緊急の業務とはいえあんなブツを手に入れて政府と軍、首相直轄な関与なしに、つまりあんな小人数の北極ギャングで話が進むのがおかしい。そこが前日譚という美味しい状況をフル活用しようという創意と工夫が足りない馬鹿さ加減なわけだ。
 それは例えば、最低限の専門家と極地それとも探検大好き人間にメンツを留めるなら、ハプニング的初宇宙人をどう食い物にしようか(近所の仮想敵ロシア人に高値で売り付けるとか、バイオベンチャーと結託するとか、対人間心理戦×対バケモノ戦を煽って結局みんな化け物に食われてしまえば、そして誰もいなくなって謎だけが残るわけだ)というザワザワ感を盛り込むとかゆう事である。そんな原住民・人間の欲望と期待をバケモノ宇宙人の見境なし大喰らいがじわじわがつがつ裏切ってゆくなんてのが前日譚的理想だろう。つまり、いっそアムンゼン時代まで遡らせればよかったのだ。
 なにせ「エイリアン」だから血飛沫臓物も絶叫残虐も当たり前、夜のトイレが怖くておねしょ激増もセラピー繁盛なら産業振興上大けっこう。しかし、前日譚といいながら、ただバケモノの大暴れ肩慣らしみたいな、まだ見てないけれど82年本編と恐らく大差あるまいと思われる開放系血流量勝負な話ならただの焼き直しと同じこと、特撮進化30周年博覧会な話ならまっこと退屈の極みだ。
 ただし、当作品もまたひとつ謎を残して終わっているのが気になる。それは、あんなイカレ節足動物があんな宇宙船をこしらえるか?というあたりで、あのバケモノ自体10万年前の氷海中の生きもの由来であろうか?生存の危機に瀕した宇宙人が遺伝子?保存の奥の手で化け物に自分を注入したらあら不思議、バケモノが止まらない‼なんてのも楽しい話だ。なんだか自分で映画を作った方がよっぽど早い。

・82年正編を想像的につまらなくした廉でマイナス0.5
・ノルウェーへの賠償のためにマイナス0.5
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