フラハティ

獄門島のフラハティのレビュー・感想・評価

獄門島(1977年製作の映画)
3.2
市川崑監督の金田一耕助作品第三作。


前作『悪魔の手毬唄』からなんと同じ年に公開された本作。
横溝正史原作のなかでも最高傑作と名高い『獄門島』。
監督曰く、映像化させるのに最も苦労したらしい。
一番は動機作りなんだとか。


さすがに連続で三作観きったので、流れは大体わかってくる。
あぁこの人は殺されるんだろうなとか、あの警部は「よぉし!わかった!」って言いながら何も分かってないんだろうなとか。
そしておかえり、坂口良子さん。
あんたと金田一のやりとりを見たかった。

戦後が舞台であるのは、『犬神家』や『悪魔の手毬唄』よりも印象が強い。
冒頭から負傷兵の姿をした男が出てくるし、依頼を受けるのも戦闘に参加していた男からだった。
プロットは基本的に『犬神家の一族』まんまだが、スケキヨのようなインパクトのあるキャラがいるわけでもなく、流れは慣れたようなもので新鮮さはちょっと劣る。

排他的な孤島である獄門島。
暗雲が立ち込める島の姿は、禍々しい怨念が浮かび上がったものか。
金田一耕助は、探偵という身分を隠すことで若干疑われたりもする。
孤島っていうのはワクワクするんだよね。
でも田舎の閉塞さや、地元に根強く残る怨念などは今までの作品よりも弱いような気もする。


本作はちょっと人物を上手く捌ききれていない感はあるね。
三姉妹のキャラは非常に濃くて、戦後設定なのにこんな感じでいいのか…?と若干不安だったが、母親の姿を知れば別に不思議ではなかった。
むしろこうなるなとも納得。
鵜飼はキャラが濃いのにあんまり活躍がなかったのは残念だな。
あと伏線が回収されない人物がいるんだけど、あの人はどうしたのだろう。


結末が改変されているらしいんだけど、原作を読んだのが遥か昔で忘れてしまっているんだよねぇ。
確かに監督の苦悩が見てわかる。
動機付けにはかなり手こずってるね。
映画だけの印象だと、やはり弱いし説得力にも欠ける。
重厚さや耽美さも少し影を潜め、ちょっとバランスが悪いのだろうか。
あれだけ死体のインパクトが強い(首チョンパとかそれ要員)にも関わらず、ちょっともったいないよね。
結末の切なさは相変わらずなんだけどね。
この事件の顛末はすごく後味が悪く、どうしてこうなってしまったのかというインパクトが強い。
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