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パリ、18区、夜。のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

パリ、18区、夜。(1994年製作の映画)
3.5
【パリ18区はマジで怖い!】
アンスティチュフランセ東京で開催のカイエ・ドゥ・シネマ週間にてクレール・ドゥニ「パリ、18区、夜。」を観てきた。本作は1994年度カイエ・ドゥ・シネマベストテン2位の座を仕留めた作品でもあり、パリの移民問題に向き合った作品とのこと。正直、二本立ての1本目に観た「美しき仕事」が凄すぎたので霞んでしまったものの、「最強のふたり」にはないどん底感と「ディーパンの闘い」にはないコミカルさを併せ持つこれまたユニークな作品でしたぞ。


☆「パリ、18区、夜。」あらすじ
リトアニアからはるばる親戚を頼ってパリ18区にやってきた女性。同じアパートに住むアフリカ移民、そして老婆殺人事件が渦巻く。パリにあるのは希望か...それとも絶望か...


☆本当にあった怖い話
本作は実際にあった老女連続殺人事件を基にしているが、それ以前にパリ18区の怖さを存分に描ききったトンデモナイ作品です。原題が「わたしは寝ない」とあるだけに、寝る隙もないような程怖い18区が描かれています。

なんといっても、軽やかな音楽をバックに、フランスに対して希望を抱きやってくる女性と凄惨な老婆殺人を交互に描いていく厭なスタイルが特徴的と言えよう。自分の身近であまりに恐ろしい事件が起きている。それに気づかぬ恐怖。クレール・ドゥニ恐るべし手腕で観客の脳髄にガツンと一撃を食らわす。そしてストーカーに厭な警官。そうか、パリ18区ってムーランルージュやエロチズム博物館のあるあの歌舞伎町みたいなところかと気づかせられる。

観ていて、ブンブンがフランスで経験した怖い出来事がフラッシュバックするので背筋が凍る。なんだけれども、登場人物が皆バカ過ぎて笑えてくるところがなんとも言えない。アフリカ移民がリトアニア移民の女性に対し、アフリカの村は良いよ、半裸でパラダイスさ!と真顔で語り始めるシーンは、あまりの文化の違いに「いやいやさすがに...」と失笑してしまった。無論、当のアフリカ移民からしたら常識的なことで笑ってはいけないのだが、妙に間抜けでねぇ。

全体的なテンションとしては、「美しき仕事」には及ばなかったものの、面白い一本を観られて得した気分でした。
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