ヨツ

誰も知らないのヨツのネタバレレビュー・内容・結末

誰も知らない(2004年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

『万引き家族』を劇場に観に行こうかなと思ったのだけれど、その前にずっとなんとなく避けていた是枝監督の過去作品に触れておこうとこれを機に決心。でも結局DVD借りてきてから2週間ぐらい放置したままなかなか再生できなかった。

とてもつらい、重い、作品だと聞いていたので、もっとやるせなさや憤りや鬱々とした気分を感じることになるのかと思ったのに、予想に反してそんなことはなかった。感じたのは、実際の事件のエグさや惨たらしさみたいなものをオブラートに包んで、ただただ子供達の純粋さを映した美しさ。あくまで倫理観を世に問いたいのではなく、あまりにもつらい状況に置かれても引き出される究極の美しさを描きたかったのではないかなと個人的には感じた。

明がお年玉を配るシーンや4人で暮らせなくなると訴えたシーンの健気さ、ミスドでドーナツを食べながら母親を批難しても結局は母親の何気ない一言に微笑んでしまうシーンでみえる手放してしまえない母親への愛、紗希からのお金を反射的に断るシーンで感じる貧しさに包まれても失われない潔癖さ、どれもこれも理想の具現化みたいに美しかった。そして、圧倒的に恵まれた環境に甘んじて健気さも愛も潔癖さも失いつつある自分を意識させられて、ただひたすらに情けなかった。

そしてYOU演じる母親は、ただただ無邪気で残酷で自分勝手な少女から抜け出せないまま大人になった人物だと感じた。少女がみなそういう無邪気さや残酷さや自分勝手な我儘さを持っているというわけではなく、少女時代にだけ持っていることが許されるその類のものを遂に手放せなかった人だな、と。彼女自身が子どもなんだから子どもの面倒なんてみれるわけないのだ。そういう人物を、醜悪さを感じさせず、かつリアリティを持って演じているなと思い、YOUさんがどう思うかはわからないけどハマり役だなと思った。

それにしてもタイトルがしんどいなあ。あ、あとこれはなんでかと言われたら全く言語化できないんですが、エンドロールが流れ始めた瞬間に私この映画を映画館で観たかったなと思った。
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