友ニ

許されざる者の友ニのレビュー・感想・評価

許されざる者(1992年製作の映画)
4.5
 公開時に映画館で観に行って以来、およそ30年ぶりに観ました。

 何が正義で何が悪なのか。根源的な部分を問いかける作品です。

 J.ハックマンがまた適役です。
 『俺が法律だ!』と言わんばかりに居丈高に振る舞いながらも、秩序のために必要以上に罰は与えず、仇討ちも禁ずる。
 賞金のためにならず者たちがあちこちからカウボーイを殺しにやって来るが、それはやってはならないことだと、酒場でコテンパンに痛めつける。
 正義漢面した保安官が、実は一番酷いことをやっているのではないかと感じます。秩序を維持するためには、それも必要なことだったのでしょう。
 
 今現在、ネットやTVなどに事故や犯罪、不祥事を起こした人間や団体などを、これでもかというほどの誹謗中止罵詈雑言が溢れていますが、果たしてそれは必要なことなのか、悪事を働いた者を必要以上に痛めつけることが、社会にどのように影響していくのか。
 この映画ですでに30年前にイーストウッド監督は問うていたのではないかと、感じました。

 C.イーストウッド演じるW.マニーの優しさや子煩悩で愛妻家という面から、つい彼の方へ肩入れしてしまいますが、実はそれは良くないことなのではないか、ということなのでしょう。
 しかしながら主人公もまた、貧しい暮らしの中で、気が乗らないが人も殺すんだ、こっちも生きるために必死なんだという、そういう部分も人間として無下にはできない。

 イーストウッド監督は、そういった人間社会の、一筋縄ではいかない難しい部分を表現したかったのでしょう。
 『世の中には正義も悪もない。あるのは真実だけ。』だというのが、この作品を観た私の感想です。
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