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許されざる者のRのレビュー・感想・評価

許されざる者(1992年製作の映画)
4.5
素晴らしかった! こんな傑作をいままで見てなかっただなんて! 見もせんと何となく、普通によくある西部劇なのだろうと決めつけてたとこがあったけど、全然違った。昔は大酒飲みで、人の命を平気で奪う荒くれ者だったウィリアム。結婚した女の幸せのために酒も殺しも全てやめていたのだが、妻はとうに死に、生活も貧窮していたところに、キッドという若者が賞金稼ぎの話を持ちかける。ある娼婦の顔と体をズタズタに切り裂いた若者二人を成敗してくれた者に、被害者の娼婦たちが1000ドルを支払うという話だ。足を洗っていたウィリアムだが、自分の子供たちの未来のために話に乗ることに決め、荒くれ時代の親友ネッドを誘って3人で殺しを決行することにする。前半だけ見ると、ウィリアムとネッドがおじいちゃんであるということを除いては、まぁ普通にありそうな、悠然たる余裕を感じさせる西部劇なのがだ、これがだんだんと予想外の重々しい展開になっていく。賞金の対象となる二人の若者も普通に人間くさい人間であることを目の当たりにするキッドの動揺にはじまり、彼らの生きる世界が、善と悪とが境目なく混然と存在する、まったくグレーなものであるということが徐々に明らかになっていく。で、タイトルの、許されざる者とは、一体誰のことを指すのか、最終的に一筋縄ではないそんな問いを突きつけてくる。と同時に、夕焼けをバックに荒野を進む彼らをとらえた映像など、まばゆいばかりの自然が、じんと目にしむショットや、娼婦との詩情あふれる演歌のようなやりとり、しみじみとした友情の滋味を描いたシーン、などを通して、自然と人間の美しさが描かれていく。この辺のパッと見てすっきりとなめらかに感じられる演出のすばらしさは、イーストウッドらしくてめちゃめちゃイイ。そして、ものすごい怒りの炎にウィスキーを注いで到達するクライマックスの圧倒的な見事さ!!! ワーオ、ワーオ、言うてしまいました。俳優皆さん素晴らしく、イーストウッド&フリーマン&ハックマンなど安定と言うほかないクオリティのなか、個人的にはキッドを演じたジェイムツウールベットが大変お好みやった! 声と訛りが最高。あとフランシスフライシャーも毎度のいい脇役っぷりやし、顔切り裂かれた女の人の情感もとてもよかった。そりゃこれは名作と呼ばれて当然ですわ。
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