悪党を罰するということは、正義でありながら罪でもある。
つまり、悪党は"許されざる者"だが、それに罰を与えたり復讐したりする主人公自身もまた、"許されざる者"であるということだ。
悪党の行いを許せず罰を与えることに賛同していたはずの正義感がある観客も、観終わってから、自分の考えは無責任で不徳ではないかと疑問を抱かされるのではないだろうか。
ある出来事や出会いを通して「荒んだ人物が良い方向に変わる」ストーリーはよくあるが、この物語では、良い方向に変わったはずの人物の「その後の人生」にスポットを当てている。
だから、主人公の過去がよく作られており、それが物語での葛藤に大きく影響するという、大変優れた脚本だった。
キッドが初めての殺しを後悔するのがまた良い。あそこで後悔しなかったらキッドは長生きできないだろう。
イーストウッドは自分の老年感を映画に生かすのが巧いなあ。