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イースタン・プロミスのabdmのレビュー・感想・評価

イースタン・プロミス(2007年製作の映画)
4.0
クリスマス前夜、助産師アンナの元に身元不明の妊娠中の少女が運ばれる。
帝王切開で子供は助けることはできたのだが、少女は死亡してしまう。
少女の身元を探るべく、持ち物であるバッグを漁るとある日記がでてきたのだが、そこにはとんでもないとんでもない、そりゃもうぶったまげたことが記されていたのだった______系クライムサスペンス。


『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に続くクローネンバーグとヴィゴ・モーテンセンのコンビ。
今作では狂気、憂い、優しさと困惑が混在する表情をした男を演じる。マフィアに家族で喧嘩売るナオミワッツや親の七光り役のヴァンサンカッセルと皆さん揃ってイイ味プンプン出した贅沢作品。

登場人物全員、本来の姿ではない偽りの自分を演じていて、それによりアイデンティティが欠如していく。
今作の見所はその本来の姿が曝け出される瞬間である。
他にもウィゴ・モーテンセンがサウナで切り裂かれる瞬間の血飛沫と裂けた背中の痛々しさ、そしてモーテンセンのモーテンセンがこんにちはする瞬間もそれはそれで見所である。

新しいモノを得るためには"破壊"が必要と考えるクローネンバーグ。
破壊の対象は人によって異なり、父親だったり偽りの自分だったり、本当の自分だったりする。
らしくない堂々たるクライムサスペンスではあるがしっかりとした作家性のある、紛れもなくクローネンバーグの映画である。
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