滝和也

イースタン・プロミスの滝和也のレビュー・感想・評価

イースタン・プロミス(2007年製作の映画)
4.0
奇しくも、脚本
スティーブン・ナイト
作品を連続して鑑賞。
脚本のダークな世界観
とクローネンバーグが
見事にマッチした…。

久しぶりのマフィア映画です。スティーブン・ナイトはステイサムのハミングバードの監督・脚本家であり、偶然連続して見ることに。こちらの方がまとまってますね。ロシアンマフィアのダークな世界観が見事に描かれています。それは監督クローネンバーグ、ヴィゴ・モーテンセンの演技による部分も大きいでしょう。

いきなり、理容室で剃刀で殺される男。そして薬局に助けを求める血塗れのわかい妊婦。妊婦の手術にあたった助産師アンナ(ナオミ・ワッツ)は彼女がロシア語で書いた日記を翻訳するため、ロシア料理店に向かい、店主セミオンと会う。そこにいた息子のキリル(ヴァンサン・カッセル)と友人ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)。彼らは2つの事件に繋がるロシアンマフィア「法の泥棒」たちだった…。

東方の掟、その題名通り、マフィア世界の様式美が存在します。表の顔は善良なる市民、ロシア料理店の顔を持つその組織。それに反射するゴッドファーザーを思わせる闇が表されたそのシナリオと表現。冒頭から炸裂する赤と黒の色、静寂と暴力のコントラスト、クローネンバーグの映画に戻ってきたなぁと感慨深かったですね(^^)派手なシーンは少ないのですが、見事に浮き上がるその作りに感心します。

中でも、静かな会話なのですが、日記帳を持つアンナの住まいを聞き出そうとするボス、セミオンの怖さ。不気味な違和感がたまらない…。また派手なシーンでは、やはりサウナでの襲撃シーン。リアルファイトの極地、全裸で戦うヴィゴの熱演が素晴らしい。白いサウナの中で血が…。

そして見事な仕掛け。その様式美とコントラストにあてられ、全くかんがえてもいませんでしたので…。

ヴィゴ・モーテンセンのクールな演技。タバコの加え方。ヴァンサン・カッセルの繊細で如何にも駄目な2代目の演技。ナオミ・ワッツの美しく、優しい市井にいる善良な市民の存在。うまく嵌ってます。

全体を覆う緊迫感と不気味な影、最後の余韻と正にクローネンバーグの作品。闇の深さはまだ先があるような…。残念ながら、中止になった次作を欲するのは、欲張りと言うものでしょうか…(^^)
滝和也

滝和也