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鉄路の闘いの一人旅のレビュー・感想・評価

鉄路の闘い(1945年製作の映画)
5.0
第1回カンヌ国際映画祭国際審査員賞。
ルネ・クレマン監督作。

二次大戦時ドイツ占領下のフランスを舞台に、ドイツ軍用列車の運行妨害を実行する鉄道レジスタンスの活躍を描いた戦争アクション。
運行妨害の目的こそ違うが、ジョン・フランケンハイマー監督の『大列車作戦』のように、レジスタンスは列車が走行できないようあらゆる破壊工作を実行する。予め燃料を抜いたり、ブレーキ管に刃物で傷を付けたり、線路のポイントに木の板を挟んで脱線を図ったり、手作業で線路の一部を外したりして列車の進行を阻止する。脱線した列車が谷底へ豪快に転落していく描写は圧巻の一言だ。
列車や線路に対する地道な破壊工作だけでなく、線路を取り囲んでレジスタンス対ドイツ軍の激しい攻防戦も描かれる。列車に積載された戦車に向かってロケット弾を発射するレジスタンスに対し、ドイツ軍も歩兵と戦車による砲撃で対抗する。ドイツ戦車が林に隠れたレジスタンスを追撃する場面の迫力は圧倒的で、キュラキュラとキャタピラ音を響かせながら木をなぎ倒して突き進んでいく戦車の姿が恐ろしく、そしてかっこいい。
本作は一貫してフランスのレジスタンスが見せる雄姿と活躍を描いている。フランス国民の愛国心を高揚させるような内容になっていて、国策映画としての側面が大きい。終盤、フランス国旗が至るところに掲揚され、解放された市民が国民のもとに還った列車で嬉しそうに移動していく様子が感動的だ。過ぎ去った列車の後部には、“フランス万歳!”の文字と鉄道レジスタンスに対する称賛のメッセージが描かれる。鉄道レジスタンスの勇気ある行動がドイツから列車と線路を奪還し、そして国そのものの奪還に対して多大な功績を残したことを讃えている。
また、特定の人物に焦点を絞っていない点も素晴らしい。本作には明確な主人公は存在しない。破壊活動に関わったすべての人間がこの戦いの主役なのだ。
それにしても、ルネ・クレマンの才能に驚嘆する。長編処女作である本作で既にこの完成度。『パリは燃えているか』よりずっと以前に撮った、戦争映画の傑作だ。
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