えいがうるふ

ミルクのえいがうるふのレビュー・感想・評価

ミルク(2008年製作の映画)
3.6
ハーヴェイ・ミルクという一人の男性同性愛者が自らの権利を訴え立ち上がり、政治家としてのマイノリティである彼ら自身の存在の認知を社会に広めた功績とその経緯を比較的淡々と描いていく内容。実在の主人公の背景にはうっすらとした知識しかないものの、その程度の認識のまま想像通りに事が進んでいくので映画としての面白みはあまり感じられなかったが、謂われなく虐げられてきた人々の歴史を知る上で重要な作品と思われた。

ナイーブで傷つきやすい繊細さと、その裏腹に性的に奔放で時に衝動的なそのセクシュアリティとを併せ持つ男性同性愛者の人たちは、より本能に忠実に伸び伸びと生きる存在のように見えて個人的に羨ましく感じることもある。それでもヘテロセクシャルの自分やはり全面的に共感できない面も多々あり、まして価値観や行動規範に振り幅の余裕がないタイプの人間にとっては完全に理解不能であろうことは容易に想像できる。
弱さゆえ理解できないものを恐れ、排除しようとしてしまうのもまた人間の本能ならば、全ての人間がその違いを認め合い理解し合うまでの道のりは果てしなく遠い。