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メタリカ:真実の瞬間のMASHのレビュー・感想・評価

メタリカ:真実の瞬間(2004年製作の映画)
4.0
かなり面白い!まぁ正直僕がメタリカのファンだからという部分も大きいとは思うが、それを抜きにしても中々興味深い内容になっている。普通音楽ドキュメンタリーで有名バンドを扱う場合、そのバンドがどれだけ偉大かということに焦点を当てることが多い。しかし、この映画はメタリカの歩んできた軌跡にはほとんど焦点は当てておらず、その当時のメタリカの内面を掘り下げているのだ。これにより、メタリカというモンスターバンドのリアルが鮮明に見えてくる。

この映画によってメタリカが好きになるということはあまり考えられない。音楽ドキュメンタリーといっても過言では彼らの曲はほとんど紹介されておらず、アルバム制作過程でのメンバー同士のの確執やジェイソンのアルコール依存症など、彼らの栄光ではなく苦しみを映し出している。メタリカほどのビッグバンドがここまで内面をさらけ出しているのは驚きだ。あまりにさらけ出しているもんだから、時々観ているこっちも辛くなってくるシーンすらある。何も劇的なことが起こっているわけではないが、彼らの抱える苦しみがダイレクトに伝わってくるのだ。

しかし、この映画はそういう苦しみだけではない。そういった苦しみからの解放でもあるのだ。互いの心の内をさらけ出して時にはぶつかり合いながらも、少しずつ前進して行く彼らの姿には感銘を受ける。特にジェームズとラーズの関係は心打たれるものがある。

結果的に『St. Anger』はヒットはしたものの、残念ながら古参のファンたちには嫌われるアルバムとなってしまった。僕はこのアルバムが嫌いではないが、当時受け入れられなかった理由も分かる。ギターソロがほとんどないことやカンカンという感じの軽いドラムの音などは従来のメタリカっぽくない。しかし、これは彼らがこの作品を作る過程で前に進んだということではないだろうか。この映画を観た後に『St. Anger』を聴くとまた違った印象を受ける。

30年以上も活動を続けながらも、いまだに新作をリリースしたりと現役バリバリな彼ら。彼らの底なしのエネルギーはどこから来るのだろうかと思っていたが、この映画のようにもがき苦しんだからこそ今の彼らがあるのだろう。ある意味で非常にパーソナルな映画だが、メタリカというバンドを理解する上で見て損はない映画だ。
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