黒澤明監督作品
20世紀初頭のシベリアを舞台に、探検家のアルセーニエフと天涯孤独のゴリス人猟師デルス・ウザーラの友情を描いた叙事詩
全編旧ソ連で撮影されたアカデミー外国語映画賞受賞作であり、監督初の70mmフィルムが使用されている
そして唯一U-NEXTで配信されていない黒澤作品
黒澤映画で全て字幕というのがかなりの違和感だったし、なぜかてっきり戦争映画かと思ってたので二度驚きでしたが、そんなことは観始めたらすぐにぶっ飛んでいく
シベリアの厳しい自然がスペクタクルに描かれており、人間が自然の前ではいかに無力ということなど、奇しくも同じ日に観た『ビッグ・リトル・ファーム』と非常に重なる映画で、自然に対して畏敬の念を忘れてはいけないという監督の強い思いがひしひしと伝わってくる
なんとも言えない厳かな張りつめた空気感が、一見地味なストーリーのアクセントとなり、2時間半近い作品でも全く飽きさせない洗練された画面構成
言ってしまえば地味なくらいほとんど起伏もなく、黒澤作品にしては珍しくエンタメ性は希薄でも決して難しい映画ではなく、静かながらに時に激しく動き出すドラマ性が抜群に効いてくる見事なプロットにぐんぐん引き込まれる
なにより雄大な大自然を捉えた映像美を背景にした壮大なスケール、そしてその美しいシベリアの大自然を有効に使ったショットの連続で、この映画の芸術性が高さがうかがえる
主演のデルスウザーラ役を務めたマクシム・ムンズクさんの味のある繊細な演技が光り、ずんぐりむっくりなフォルムも可愛らしくて好き
大自然の中でも一人で生きていく知恵や能力を持ち、博識なのに素朴で謙虚で愛情深い人間的な温もりのある彼がどうしようもなく愛おしい
観てる時以上に、観終わってから更にじわじわと込み上げてくるような作品でした
舞台やキャストや言語やフィルムサイズなど含め、監督のフィルモグラフィの中でも最も異色の作品と言っても良いかもしれませんが、モノクロでもなければ三船敏郎 仲代達矢 志村喬などのお決まりの錚々たるキャストがいなくとも、これほどの映画が撮れるということをまたしても世界に知らしめた一本ではないだろうか
〈 Rotten Tomatoes 🍅73% 🍿94% 〉
〈 IMDb 8.3 / Metascore - / Letterboxd 4.1 〉
2021 自宅鑑賞 No.149 GEO