ロシアの地質学者ウラジーミル・アルセーニエフ原作による実話。
彼はシベリアのウズリ地方の調査に行き、原住民であるゴリド人のデルス・ウザーラに出会う。
狩猟を生業として森で生きているデルスは次の日から調査団の案内人として行動を共にする。
どの国でも先住民は自然と共に生きている。
そこに押し寄せる開拓者や入植者によって先住民は追いやられ絶滅していく。それは自然な成り行きなのかも知れないが。
初めてアルセーニエフと会った時デルスは言う「ロシア人が入って来て森の動物を殺してしまうので猟が上手くいかない」と。
国家の命令で未開の地を開拓する為に入って来た調査隊に対し、デルスは生活のための土地を奪われる側の人間なのだ。
デルスは家族全てを天然痘で亡くしているが、多分それも入植者が持ち込んだ病気だろう。
火と水と風の威力を馬鹿にしてはいけないとデルスが言う様に、ロシアの大自然の中で生きる彼の知恵は驚くべきものだった。
デルスに命を救われたアルセーニエフ隊長は彼に厚い信頼を寄せる様になる。
最後の最後まで隊長がデルスを尊重しているのも素晴らしかった。
これはロシア文学好きの黒澤明だからこそ両者が魅力的に描かれているのかも知れない。
デルス役のマクシム・ムングスが黒澤明の誕生日に向けたビデオメッセージの中で、東京、大阪、京都に行ったことを楽しそうに話して日本人スタッフの名前も呼びかけていました。勿論今は2人とも天国ですが、とても微笑ましいビデオメッセージでした。
そして実物のデルス・ウザーラは映画の中よりは少し細身でしたが、正に自然の中に生きる男の様でした。
漫画家ヤマザキマリさんは息子の名前にデルスと付けた。多分デルス・ウザーラから取っている。