ごろちん

ゼロ地帯のごろちんのレビュー・感想・評価

ゼロ地帯(1960年製作の映画)
4.6
原題は『KAPO』。邦題の『ゼロ地帯』よりも原題の方が絶対良い。何故ならこの「KAPO」には人間らしさを感じるから。

14歳の少女エディットは目の前で連行される両親を追い、自身も強制収容所へ輸送される。ユダヤ人であることを隠し、比較的安全な労働収容所に移送されるも、極度の飢えと疲労に耐えかね、エディットは仲間を監視する「KAPO」になる道を選ぶ。そしてその後。

戦後15年しか経っていない作品だからなのか、収容所の劣悪な環境がかなりリアル。女囚たちがガス室行きになるかどうかの死の選別や、懲罰(高圧電流が流れる鉄条網の前に一晩中立たせ、一歩でも下がれば射殺)といったシーンも緊迫感があって目が離せなかった。

強制収容所の記録映画『夜と霧』を観た時は、生きる希望を失った虚ろな囚人たち、あるいは夥しい数の死体が映し出される映像に、悲しみを通り越して虚しさを感じた。でもこの映画は囚人同士のいざこざや葛藤、妬み、恋愛といった人間らしさがある。人間扱いをされていない中で繰り広げられる人間ドラマに、なんとも言えない厭戦感情が芽生える。

生き抜くべきか、人の道を全うすべきか。究極の選択を迫られるエディットの姿が印象に残った。
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