Cisaraghi

大殺陣 雄呂血のCisaraghiのネタバレレビュー・内容・結末

大殺陣 雄呂血(1966年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

陰惨な話で、何とも言いようがない…。

最初、これは『ある殺し屋』の雷蔵、と思ったら、前年の作品だった。まるであの主人公にはこんな過去があったのか、と思わせるような話。許嫁と桃の節句を祝う幸せな時もあったのだ、と。浪人になって荒んでいくにつれ、キャラが眠狂四郎方向に傾いていくのだが。

雷蔵が斬って斬って斬りまくり、ついには剣戟の様式美そのものまでも斬り捨てるかの如く斬り倒して辿り着く境地とは何なのか。これ以降スクリーンで雷蔵さんが月代・丁髷姿で堅気のお侍を演じることはなく、アウトローや裏社会に生きる主人公ばかりを演じることになるのは何やら象徴的。

八千草薫姫、雷蔵映画に登場しても決して雷蔵ガールズのひとりにならないのは美貌と気品によるのか、はたまた演技力なのか何なのか。他社の女優さんだから?しかし、おいたわしさはいかばかり、薫姫までこんな目に会わせるなんて許せない!と憤ってしまう。でも、汚れ役でも汚れない薫姫さすが。ここでは日本のイングリッド・バーグマンとお呼びしたい。

それにしても、最初のところからホントにひどい話。加藤嘉さん、アンマリではござりませぬか。大殺陣の間はバッドエンドにならないことばかりを祈って見ていたが、この結末、ハッピーエンドにも思えない。何故こんな話を書くのか…。レクイエムのような伊福部昭の曲が流れる、茅野の向こうの落日は悲しくも美しかったけれど。

この映画で雷蔵さんは211人を斬っている、とのことである。必死の形相の雷蔵さん、頑張った。

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