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ローズマリーの赤ちゃんのHIROのレビュー・感想・評価

ローズマリーの赤ちゃん(1968年製作の映画)
3.5
マンハッタンの古いアパートに引っ越してきたローズマリー・ウッドハウスと役者志望の夫・ガイ。やがてローズマリーは妊娠するが、アパートでは奇妙な出来事が進行していき...というお話。

なかなかおどろおどろしいお話でしたね。

冒頭のシーンや映像、ファッションなどがまるでホラー映画とは思えないようなお洒落さでした。
ホラー的な演出があるわけではなくて、どちらかというとサスペンス映画という印象。
ショッキングな描写に頼るのではなく、誰にでも体験するような日常生活に潜む不安感を煽り、ジリジリと恐怖を感じさせる演出は流石でした。

まずローズマリー夫妻の隣人・カスタベット夫妻が怖いんですよね。
小さい時から育てて来た養女が自殺したのにも関わらず、カスタベット夫妻は悲しむどころかめちゃくちゃハイテンションなんですよね。
もうこの時点でこの夫婦のことは信用できないわけですよ。
ローズマリーに対して異常に親切なところもまた不気味。
お節介もここまで来ると気持ちが悪いですな。

ローズマリーは妊娠したことでマタニティーブルーに襲われるんですが、妊娠中に陥る不安感をホラーとしての恐怖に転換させていくところはとても面白いと思いました。
当時話題になっていたサリドマイド事件を背景にしているらしいので、当時の妊婦が抱える恐怖というものがどれほど大きいものだったかも知ることができると思います。

途中で挿入されるローズマリーの夢か現実か分からないような独特な映像も印象的。
不気味で不快感のある映像体験を味わうことができます。

異常に優しい隣人・カスタベット夫妻やまともに話を聞いてくれない夫・ガイに対して不信感が込み上がり、信用できるのはお腹の中にいる我が子だけなわけで、何が何でも我が子を守ろうとするローズマリーの姿に母親としての健気さを感じつつも、あまりにも妄想めいたことを言い出すので微妙な違和感を感じたりもさせる。
ローズマリーは周りの人間は実は悪魔教徒で、彼らがお腹の中の赤ちゃんを狙っているような気になってしまうんですよね。
マタニティーブルーを悪魔と結び付けるなんてなかなかの悪趣味映画なのかも知れませんな。
妄想なのか、それとも悪魔教徒達の陰謀なのか、物語が二転三転するので最後まで飽きさせない。最後の数分まで真実が全く分からないところはとても面白かったです。
ラストはそれまでの謎を全て覆し、得体の知れない恐怖を味わうことができました。

慌てふためいたローズマリーが全てを納得した瞬間、善や悪とかそういうものではなくて、母性のその先にある狂気を感じゾッとしましたよ。
ここが1番怖くて、不快な気分になれる場面だったと思いました。

ホラー映画と言っても流血シーンなどのショッキングなシーンは皆無。
ホラー映画が苦手な方でも安心して鑑賞できる作品でした。



2015-92
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