あんなに小さな町で、同級生で、付き合ってたのに関係ないところで拗れて、そのままふたりとも同じ町で暮らしている。
これを執着と呼ぶのか純愛ととるのか……想っている時間があまりに長すぎてそんなのはもう、どうでもいいのかもしれません。
「寂しくないですか?」
「体をクッタクタにするの」
美奈子の部屋の膨大な量の本で、槐多は彼女の30年を思ったのかな。
ずっとずっと忘れられなかった恋だけれど、その恋は叶ったらあっという間に終わってしまった。
田中裕子さんの内に秘めた炎と、岸部一徳さんの内に秘めた哀しみがよかった……