ショーン・ペンが初監督にして描いた、ベトナム戦争の傷
戦場の出てこない反戦映画の中で、精神が壊れてしまった帰還兵を演じたヴィゴ・モーテンセンの、キレキレの演技が冴え渡っています
タトゥーだらけの肉体と、うつろながら時折見せる攻撃的な表情が、元に戻らなくなってしまった心の傷跡を、必死でかばっているようにも見えてくる
農場を手放す
両親がいなくなる
帰る場所がなくなる
近くにいるのに、一番遠のく兄の存在
警官である兄が起こした冒頭の正当防衛と、弟の戦争での経験という、2つの命にまつわる出来事によって、片方はヒーローと呼ばれ、片方は精神崩壊してゆくところに、重なり合うことのできない兄弟の絆が痛いほどよく描かれていますね…
「人生はいいもんだ」
この言葉は、いつか弟に届くのだろうか
映画そのものが声にならない叫びのようだった
闇の中に埋もれていきそうな僕を
誰でもいいから、つかまえて…