マサキシンペイ

インディアン・ランナーのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

インディアン・ランナー(1991年製作の映画)
3.6
若き日のヴィゴ・モーテンセン、ワルの色気。男が見てもクラクラ来ます。ショーン・ペンの初監督作品、荒削りだが骨がある。

舞台は1968年のアメリカ。
幸せな家庭を築いた警察官の兄、定職に着かず暴力沙汰を起こしてばかりの弟。
弟の更正に尽力する兄、期待をよそに自滅せずにはいられない弟。

弟の非行のドラマは3つの柱から成立している。

1つ、社会に適合できずに荒む男の苦悩という普遍的なテーマ性。

2つ、ベトナム帰りのPTSDという時代背景。

3つ、素行が悪いことで有名だった30歳過ぎのショーン・ペンという実存の影。


個人的に哲学的思索への熱中が、社会適合できなかった苦悩に対する縁となった青春期を過ごしたために、不良の心理描写には共感的な楽しみ方があまりできない。
ベトナムとPTSDというモチーフは、マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』と共通しているが、それと同じく、作中でトラウマに関しては誰も触れようとしないので(それこそがあの時代の空気を表している、ということは承知しているが)、憂鬱や非行に走る因果がストーリー的に欠損しているため、取りつく島もない。
またショーン・ペンに関しても、僕は年齢的に『I am Sam』あたりから意識して観だしたので、尖っていたころの彼を知らない。

映画として出来が良かったのは間違いないが、以上の点を以て、僕の持つ歴史性に全く合致せず、口惜しい鑑賞となった。
マサキシンペイ

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