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ドクトル・ジバゴのryosukeのレビュー・感想・評価

ドクトル・ジバゴ(1965年製作の映画)
4.5
超大作の評判通り見ごたえのある傑作。時代の雄大な流れに翻弄されていく一人の男と二人の女の物語。美しい衣装も美術も非常に豪華。大量のエキストラを動員し、革命期の激動のロシアを大迫力で映し出す。広場でのデモや、パルチザンの戦闘シーンの臨場感は素晴らしい。
広角で広大な自然を捉えた画が毎シーンとも美しい。前半は無駄のないカット割りと激動の展開で一気に駆け抜ける。後半若干失速したのは否めないが、基本的には最後までしっかりと魅せてくれる。
印象的な画がいくつもあり、記憶に残る。蒸気機関車の迫力、雪原に映える赤軍の赤い列車や赤旗、内部まで氷に覆われた家のファンタジックな美しさ、何度か使われる凍った窓越しの蝋燭、家の中で象徴的に散っていくひまわり等々。
ワンシーンワンシーンで鮮烈な印象を残すようによく工夫された演出、撮影が用いられている。
車体を覆った氷を割って汚物を外に捨てるシーンの力強さ。部屋を移動していくコムロフスキーを薄く凍った窓越しに長回しで移動撮影する工夫。反乱を起こす兵に撃たれた将校の血が樽の中に滲み出すシーン。クリスマスパーティでの銃声のタイミング。列車から唐突に見えるめちゃくちゃになった村の衝撃。画面全体が真っ暗であると思ったら実はトンネルの中で突然外の景色が表れる演出などなど挙げていくとキリがない。
キーアイテムのバラライカが用いられているラーラのテーマは感動的で映画のシンボルとなっている。若干使い過ぎ感はあるが。
ユーリを演じたオマー・シャリフの演技では、ラーラの家で鏡を見つめながら家族を思う表情が特に印象に残る。
トーニャのアイロンがけを見てユーリがラーラのことを思い出していることを示唆し、直後トーニャが「ユリアティンに行って来たら?」と提案することでドキッとさせるシーンも上手い。観客はトーニャの見送りの際の表情で彼女が気付いていることを察する。後にラーラとのやり取りの中でユーリもトーニャが感づいていたことを理解するのだがこの一連の流れは非常によく出来ており、強い印象を与える。
主役陣以外のバックグラウンドもしっかりと示され、厚い人物描写がなされることで物語に深みが与えられている。
パーシャはただ革命に憑りつかれただけではなく、最後にはラーラの元に向かっていたことが示される。
コマロフスキーを演じたロッド・スタイガーは一筋縄ではいかない人物像を熱演。様々な側面をもつ人物として丁寧な描写がされている。ラーラとユーリの元に援助を申し出に行くシーンは強烈な印象を残す。彼は結局最後にはラーラの娘の手を放してしまったことが示唆され、その点にもやはり人間の本質はそう簡単には変わらないという説得力がある。
ラストのシークエンスも感動的に物語を着地させてくれる。
心臓発作で倒れるユーリに、やはりというべきかラーラは気付かず画面奥に去って行ってしまう。観客は振り向いてくれと願うが、これは映画の宿命である。
ユーリの母親のバラライカの腕前がプロ並みであったという設定をうまく活かして、ターニャもバラライカの名手であることを最後に示し、血のつながりを表現するという見事な演出で綺麗に物語は締めくくられる。
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