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醜聞(スキャンダル)のleylaのレビュー・感想・評価

醜聞(スキャンダル)(1950年製作の映画)
3.9
『羅生門』と同年に製作された黒澤監督作品。

新進の画家と人気歌手がスキャンダルとなる。2人は雑誌社を訴え、裁判沙汰に。

プライバシー侵害を批判する社会派作品でもあり、一人の弁護士の心の葛藤を描いた人間ドラマでもあります。

三船が主役だけど、志村喬が出てきてからが、俄然面白くなる。『生きる』に負けない人間味あふれる演技でした。

善人だけど騙されやすく弱い。そんな父を心配する病気の娘が無垢でけなげなんです。

颯爽とバイクに乗り、悪党とわかってもダメな弁護士を雇い続ける男気のある三船敏郎もよい。
三船が「神様」とか「お星様」と言うのが可愛らしかった。

黒澤監督が描くキャラは、どの人物もイキイキとしている。何気ない3人のお爺さんたちまで愛嬌たっぷり。

クリスマスの描写がとりわけ好きです。
バーでみんなが「蛍の光」を歌うシーン。ただ歌っているだけなのに、みんなの気持ちの中まで透かして見えるよう。

華やかなクリスマスと裏腹に、どこかで切なさがあって、これが戦後4年目の日本なのだなぁと、ふと思う。

過剰なマスコミの記事に腹を立てた黒澤監督の怒りでもあり、現代にも通じるテーマだと思います。

ストレートで雑な演出で他の黒澤作品と比べると評価は落ちるけど、個人的にはコメディタッチで面白かった。

余談。
昔のマスクはアベノマスクより小さい。笑
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