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ジュラシック・パークの2MOのレビュー・感想・評価

ジュラシック・パーク(1993年製作の映画)
4.8
虚構。それは神へと近づく所業。人間の飽くなき夢と欲望、つまり本能の、美しさと醜さを映したフィルム。

"Journer To The Island"

その夢と浪漫と恐怖に満ちた冒険のひと時こそが、僕の映画原体験に違いなかった。(記憶の捏造により、いくつかの原風景が存在するにしても、こればかりは偽らざる事実のはずだ)

ブラキオサウルスを仰ぎ見るという、それは小さなブラウン管のテレビ画面越しにも伝わる荘厳な眺めと共に、ジョン・ウィリアムズによる我らがアンセムは鳴り響く。
「ジュラシックパークへようこそ!」というジョン・ハモンドの言葉を介し、スティーヴン・スピルバーグからの招待を受けた僕らは瞬く間にその映画というイリュージョンの虜となってゆくのだった。

巨大な目玉のクローズアップに始まり、過剰なまでの人体破壊描写といい、恐竜の咆哮と人間の絶叫とをセットに──まるでアラン博士が子どもを脅かすのと同じように──嬉々として繰り広げられるスピルバーグの悪趣味表現。改めて見れば、実に映画的でサスペンスフルなストーリテリングの妙。その企みにまんまと乗せられる無垢な心には、何より恐怖のイメージがトラウマとなって刻まれる。

故にこうして色褪せない緊張と興奮が何度だって蘇る。さらに年を経るごとに見返すことには、わけのわからない涙が、得もいわれぬ感動がよもやのシーンで押し寄せる。1カット1カット、忘れようもなくすべてのシーンに刻まれた恐怖の手触り。または夢想家の欲望を満たすスペクタクルが、過去と現在の時を超えて混在する。それはノスタルジーにとどまらない記憶の旅路──。
鼓動を揺らすT-REXの咆哮が、大人の世界に童心を呼び醒ます。薄れゆく純真を取り戻すことのできるテーマパーク。そのフリーパスを固く握りしめる。

そして、恐怖映画の一方で語られる人間ドラマ(スピルバーグの自己投影)に、父性なる真のヒーロー像を胸に抱いて、見果てぬ夢を追い求めるのだ。

この世は、なんと美しくも残酷な悲劇。虚構なくして生きられない日々だ。だから僕は、映画が共にある人生をゆく。我が映画人生の父、スピルバーグに誘われた日から。
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