わたがし

ジュラシック・パークのわたがしのレビュー・感想・評価

ジュラシック・パーク(1993年製作の映画)
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 観ながら身体が吹っ飛ぶぐらい面白かった。面白いに重なる面白さ、まさに面白さのミルフィーユという感じ。壮大な音楽にがっちりハマる世界観と画面、視覚と聴覚が綺麗に溶け合い混然一体となり、ワクワク感、ドキドキ感を演出する。まさに神が創った映画だなあって10000回ぐらい口に出しながら観てた。
 公開当時の観客が度肝を抜くとかならともかく、2018年に生きる今の自分はもう恐竜なんか昔から図鑑のカラーページでたくさん観てきたし、恐竜がわんさか出る映像だって映画だってたくさん観てきたし、何ならジュラシック・ワールド観てるし、恐竜の一匹や二匹で驚くことなんかないはずだと思ってた。でも、でも、画面いっぱいに初めて恐竜が映る瞬間、「ああ、本当に恐竜が生きている」と思って死ぬほど泣いた。驚異的に上手い映画演出というのは観客全員の人生経験知を赤ちゃんにする。
 そして、スピルバーグはそこまで徹底的に観る者の心を操って恐竜を見事現代に蘇らせるのだけれども、それはあくまで映画というフィクションの範疇での話であって、その範疇を越えるのは人間としてどうなんだ(ていうかどれだけ意義のあることなのか)、みたいなことが描かれている物語でもあると思う。フィクションの力を信じている人間にしか撮れない映画。
 でもその一方で、あの恐竜生き返らせ博士にスピルバーグ自身が感情移入している嫌いもあるのではないかと思った。でも、スピルバーグはその一線を越えないのがクリエイターとして、人間としての1番の美しいと思っているんだろう、もしくは「思うことにしている」んだろう。

2023/10/16 追記『ジュラシック・パーク3D』
 とんでもなく芸が細かい3Dコンバートに頭があがらない。『タイタニック3D』の同等かそれ以上のクオリティ。光の中に舞う塵、雨、煙、植物の挙動など完璧に立体化されてる。しかも深度がガッツリ深いという。尋常じゃない手間暇がかけられているんだろうな
 箱庭的なおもちゃ立体感にはしないけれどタイタニックみたいな「もし撮影時に3Dカメラで撮影されていたらこういう立体感になる」的な生真面目な縛りも感じない、まさに遊び心と自然な立体感を両立させた素晴らしい3D。「ジュラシック・パークが3Dになるの!?恐竜が飛び出すのでは!?」のニーズに100%応えてる。
 そもそもキャメロンはタイタニックの時点で既に3D撮影みたいなカメラの使い方をしており、それを立体にするのはマイナスをゼロに戻すみたいな作業だったように思う。けどこれはあくまで2D演出映画。被写界深度浅めで見せる/見せないの嵐。そんな映像をわざわざ3Dにする意義があるのかと疑問に思いながら観てた。
 でも、博士の「子供の頃の夢を実際に触れるところまでもっていきたかった」的な台詞が、そのまま「3D化」という作業に直結していることに気付いて腑に落ちる。正しい間違ってるじゃなく、この映画は3Dにするべきだった。そういう意味でも『アリス・イン・ワンダーランド』の上位互換的な3Dコンバート映画だと思った。
 あらためて観返して、ラストの博士の寂しそうな顔、家族を知る主人公、海を飛ぶ鳥(恐竜の進化した姿)、更に進化してヘリコプターでエンドクレジット、の流れが完璧すぎる。台詞ゼロでストーリーの余韻はここまで大きく持っていくことができる。
 シーンの視点がコロコロ変わり、全編ずっと「一番ハラハラする視点」でショットを組む素晴らしさに感動。今更なんだけど、やっぱりスピルバーグって天才だな
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