ryosuke

ロスト・ハイウェイのryosukeのレビュー・感想・評価

ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)
4.9
自分の中で「ポーラX」と並ぶ最高の悪夢映画になった。共に夜の道路を疾走するイメージも共通している。全編に渡って張り詰めた緊張感がある傑作。ボウイのメインテーマも本作の雰囲気とがっちりマッチしている。
やはり無駄にややこしい設定の説明描写が多くなってしまった「マルホランド・ドライブ」よりも、本作の方がリンチ節を存分に味わえて良い。
「イレイザーヘッド」でも思ったが、何も起こっていない室内での移動撮影による局所ショットが異様に不穏になるのは流石リンチである。
画面への人の出入りも異様な感じ。普通部屋の中にあんな深い暗闇あるかよというような闇の中に、主人公が消えていく様など印象的。舞台となる家自体が魅力的である。(なんとリンチ自身の家だという!)
毎カット印象的に用いられる赤色も、作品の禍々しい雰囲気を増長させている。
狂人たちのキャラクターも最高。遠目に映った瞬間に一瞬で目を引く、遍在する謎の男は完全に異界の住人である。
「マルホランド・ドライブ」にも出てきたような、謎の権力者も素敵。今回も権力の理由は何も説明されず、設定にリアリティは全く無いが、勿論リンチ作品にリアリティなど全く必要ない。めちゃくちゃしておいて「交通安全の本を買え!」とか言ってブチ切れているシーンは笑ってしまった。
女優に強烈な照明を当て、神秘的に見せる描写も、非現実的な映画内の世界によくマッチしている。
二役をこなすヒロインはどちらもバーで「仕事」を紹介されたという経験を語り、後半の主人公が抗いがたく惹きつけられることになるのだが、果たして同一人物なのかそうでないのか... 「あんたには、あげないわ」の鮮烈さ。
普通に時系列を考えると辻褄の合わない「ディック・ロラントは死んだ」というセリフによって奇妙な円環構造が成立し、映画は終了する。
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