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ロスト・ハイウェイの10000lyfhのネタバレレビュー・内容・結末

ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ノワールなムードの中、2人の男性がお互いに変身し合うんだか乗り移り合うんだか、超自然現象に見舞われながら複数の殺人事件に巻き込まれ、さらにエロティックなスパイスが添えられた映画。プロットは複雑で、一応、辻褄の合う解釈もできるし、どのように解釈しても辻褄が合わないように作られた作品、と捉えるのも可能だと思う。後続の LA 2作品が、個人の内側の心象風景により入りこんでいるのに比べると、人物たちの身に降りかかった災難を外側から俯瞰している感が強い。サントラについて、公開当時は映画のイメージに合致していただろう後期ボウイ、NIN やマリリンマンソンが、時代が下ると、良くも悪くも映画の 90年代感を強める一因になっている(映画サントラに同時代のポップスを起用する功罪を再認識)

# 自分なりに納得した(辻褄の合う)解釈
1. レネエ(フレッドの妻)/アリス(ロラントの愛人)は、何らかの意味合いで同じ人という設定。リアルな同一人物の二重生活とは解釈せず、同じ人格テンプレからの分身的な 2人の別人物と解釈する。
2. ラストシーンと冒頭が繋がり、時系列のループが発生する。「殺される順番」で考えると、レネエ -> アンディ -> ロラント/エディ(この時点でレネエ存命)となり、映画終盤で、ピートがフレッドに(再)変身する頃に、冒頭以前の時間に巻き戻された、と考えると辻褄が合う。
3. ミステリーマンは超人的な能力を有する(同時に複数の場所に存在したり、壁を超えて空間移動したり。序盤のフレッド邸内のヴィデオは彼の撮影だろう)。彼が、フレッド/ピート入れ替わり現象の黒幕。彼の目的はロラント/エディの殺害だが、その動機は不明。また、人物入れ替わりを仕込んだ理由は、レネエ/アリスと関係を持つロラント/エディへの、フレッド/ピートの嫉妬心を利用するためかなんかと思われるが、よく分からない(ミステリーマンの目的や動機は、理不尽な事象・事件に巻き込まれてしまった側のフレッド/ピート/観客目線では、重要でないし、謎に包まれたままでよい、とも言える)
4. フレッドとピートはそれぞれ、描かれている通りの人物として実在。ピートには、ある夜、ガールフレンドと両親、そして正体不明の男(ミステリーマンだろう)を前に、何かが起こる(ガールフレンドと両親はその内容を目撃しているが、ピートにその記憶はなく、観客にも明かされない)。その結果として、ピートは収監中のフレッドと入れ替わった。
5. フレッドと入れ替わった後のピートは、その問題の夜の記憶が欠落している他は、以前のピートの人格のまま。終盤でピートがフレッドに(再)変身後も、結末までずっとピート人格なのではないかと思う(変身直後に「アリス」と呼んでいたことから、少なくとも変身直後はピート人格。ラストでフレッド宅に行っても、(おそらくミステリーマンの指示により)インターホンでメッセージを残すだけで家に入ろうともしない。自分の外見がフレッドになっている自覚すらないのかもしれない)

# 辻褄は合わないがおもしろい解釈
1. レネエ/アリスを、リアルに同一人物の二重生活者と解釈。
2. ラストシーンと冒頭が繋がり、時系列のループが発生する。収監中のフレッドがピートに変身した直後に、時間が映画冒頭以前に巻き戻っているべき(アリスが存命なので)だが、そうすると、冒頭以前でアンディが死んでしまっているので、映画序盤にアンディが登場することと辻褄が合わなくなる。
3. 物事の発生順序の辻褄が合わないというのは、物語構造として非常に面白く、観客として放り出された感も好き。このような解釈も大いにあり
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