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ヒューゴの不思議な発明のjunjuoneのレビュー・感想・評価

ヒューゴの不思議な発明(2011年製作の映画)
3.8
パリの街を臨む色彩感、
CGをふんだんに駆使したダイナミックなカメラアングル、
冬の冷気を助長するかのような小気味よいオーケストラが冴えるBGM、

映画を構成するこれら要素の全てが、これがファンタジー映画であることを確信させるため、深く考えずに安心して身をゆだねてみようと思えるのが前半の感触。

月の顔にロケットが刺さる絵をからくり人形が描き出すまでは!

これはジュール・ヴェルヌ原作の月世界旅行だ!と気付いてからは、我に返ったようにスコセッシの意図を探るつもりで見入った。

荒唐無稽のファンタジーの中に突如盛り込まれた、映画黎明期の実際のエピソード。
映画の歴史をファンタジータッチで親切に説明し、映画の素晴らしさ、人生の素晴らしさを、老人の立ち直る姿を通して伝える感動作だった。


見世物小屋で上映されるリュミエール兄弟のシネマトグラフ、主人公のジョルジュ・メリエスは映画創成期において様々な技術を開発した実在の映画製作者。
とか、本作品の題材というか教材としてたびたび登場・引用される月世界旅行や、キートン、ロイド、チャップリンの古いフィルム等、、
フィーチャーされた実在のネタが多すぎて、予備知識のない人にとっては何が実話で何が創作か、おそらくわからないだろう。


実在の人物の伝記を、リアリティからかけ離れた表現方法で映像化したことが、むしろスコセッシの伝えたい意欲、映画そのものへのあくなき愛情を感じさせてくれる。
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