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大地の子守歌の小のレビュー・感想・評価

大地の子守歌(1976年製作の映画)
3.9
角川シネマ新宿で開催の溝口健二・増村保造映画祭─変貌する女たち─にて鑑賞。

すげーや、主演の原田美枝子さん。兎をとって食べる野生児から、騙されて売られた先で、売春の客に水をぶっかけたり、娼婦の先輩をグーで殴ったり、上半身裸で折檻されたり…。

野獣のような強烈なキャラクターを見事に演じきる17歳。さすが、自ら志願したというだけありますな。これは原田美枝子さんを観る映画。

正直、話は粗が目立つ。失明したはずなのに…とか、合い間に挟まれるお遍路さんのシーンってなくてもいいんじゃないの?とか。牧師もイマイチ謎だし。

しかし、主人公のりんを観ていると、そんな粗は全てどうでも良いことのように思えてくる。理不尽で苛酷な運命を生きながらも全く暗さがない。清々しいくらいやりたい放題に自分の好きなようにやっているから。

増村監督作品に登場してくる「強烈な自我を持ち、愛憎のためなら死をも厭わない個人主義」を貫く女性の中で、このりんが、強烈さナンバーワンかも。

とても疲れる生き方だし、最後は無理がたたるけれど、これだけ好きなようにやれば、人生に悔いはないような気がする。りんから学ぶことは、辛くなったら、自分の好きなようにやれ、ということですな。

溝口健二・増村保造映画祭における鑑賞作はこれでお終い。こんな凄い監督たちに巡り合えたことは、まだ1月だけど、今年1番の収穫かも。
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