櫻イミト

風雲児アドヴァースの櫻イミトのレビュー・感想・評価

風雲児アドヴァース(1936年製作の映画)
2.5
マーヴィン・ルロイ監督による壮大な歴史文芸ドラマ。原作は米作家ハーヴェイ・アレンのベストセラー「アンソニー・アドヴァース」(1933)。アカデミー賞4部門受賞。

18世紀イタリア。中年侯爵ドン・ルイスと不本意な結婚をしたマリアはアルプスの山小屋で恋人デニスとの子を産むが他界。捨てられた赤ん坊は修道院でアンソニーと名付けられ育てられる。10年後、マリアの父である商人ボニーフェザーはアンソニーが自身の孫であることを誰にも明かさずに引き取り、アドヴァ―ス(逆境の意)という姓を与えて屋敷で養い始める。やがて成人したアンソニー(フレドリック・マーチ)は、屋敷の料理人の娘アンジェラ(オリビア・デ・ハヴィランド)と恋仲になり結婚を約束。しかしすれ違いにより二人は離れ離れになり、アンソニーは養父の借金回収のためアフリカに渡る。いつしか彼は奴隷貿易に手を染め天堕落の道を辿るのだが。。。

公開当時は大ヒットしたとのこと。個人的にはこれまで観てきたルロイ監督作の中で最も残念な一本だった。その理由は、主人公の人生の最大の危機である奴隷商人への堕落の過程が省かれている事。アンジェラとのすれ違いで投げやりになっていたと推測するしかないが、ドラマの肝がハッキリしないためその後の展開もぼんやりしてしまった。

原作が全9巻の大作なので一本の映画にまとめるのは無理があったように思う。大ヒットしたのはベストセラー原作との相乗効果によるのではないか。

※主人公の子供時代を演じたのはウィリアム・キーリー監督版「放浪の王子(王子と乞食)」(1937)で主演した双子兄弟の一人ビリー・マーチ。
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