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黒木太郎の愛と冒険のzhenli13のレビュー・感想・評価

黒木太郎の愛と冒険(1977年製作の映画)
3.7
群像映画としての、また裏返しの反戦映画としての力が後半ぐんぐん沸き上がってきて、予想していたより好かった。三國連太郎の最期と回想シーンの哀れさがあっという間に胡散霧消したかに見えてラストでつながったATGぽさ。まとまらない感じもあるけど。田中邦衛、岡本喜八、伴淳三郎、三國連太郎といった錚々たるメンバーと清川虹子、倍賞美津子、緑魔子、財津一郎、沖山秀子、殿山泰司など常連役者に、全く無名でクレジットすら無いのにほぼ主人公の伊藤智生(『ゴンドラ』の監督でいまはベテランAV監督とのこと)の存在感と異様にインパクトのある声がコントラストの強い黒白画面の中でじつに面白い具合に綯交ぜとなる。岡本喜八なんか最初わからなかった。マルセ太郎かと思った。伴淳がゲロまみれになるシーンもギャーと思いながら泣けたし、田中邦衛が姪っ子に「おいちゃんとの約束だ」とドスを畳に刺すと財津一郎が飛び起きてヘッドホンのはずれたスピーカーからアリアが流れ、マリア像の背面に光が指すシーン、伊藤智生が軍歌をバックに(戦後の焼け野原を思わせる)スクラップ置き場でめちゃくちゃに暴れるシーンなど、映画的な感動がストレートに溢れていた。
林間学校で生徒に輪姦(ここでシャレ)され猫多頭飼育に陥った緑魔子に対し、田中邦衛は「あの子たちは優しくして欲しかったんだよ」と諭しトラウマ克服のためにさらにレイプを目論むというシナリオは完全にアウト。

田中邦衛追悼として。
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