エイデン

ロード・オブ・ウォーのエイデンのレビュー・感想・評価

ロード・オブ・ウォー(2005年製作の映画)
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ウクライナ人のユーリは、ユダヤ人を装って両親と弟と共にアメリカへ移住してきた平凡な男
家族と共にニューヨークのリトル・オデッサでレストランを開いていたが、客の入りは悪く、父親は見せかけだったユダヤ教にのめり込んでカトリックの母と対立しており、騒がしく日々を送っていた
そんなある日、ユーリは父の命令でメニューの偵察に向かった向かいのレストランで、偶然ロシアン・マフィアの襲撃に巻き込まれてしまう
目の前で飛び交う銃弾や撃ち殺された人間を見たユーリは衝撃を受けると共に、武器を売る仕事は稼げるのではないかと考え始める
行動することを決めたユーリは父の行くユダヤ教会の信者のツテで出会ったイスラエル人から銃を買い付けると、危なげに最初の取引を終える
しかしそこから、ユーリの武器商人としての才能は見事に開花し、レストラン経営では目にできない金を手にするのだった
更なる事業拡大を狙ったユーリは、弟のヴィタリーに武器ビジネスのことを打ち明けると、説得の末ビジネスパートナーになってもらう
ベルリンの兵器見本市に繰り出した2人は、コネクションを作ろうと著名な武器商人ワイズに接触するが門前払いを受けてしまう
しかしそんな中、レバノン内戦が勃発
商機を見たユーリはレバノンの大都市ベイルートへ飛び、そこのアメリカ陸軍将校サザンを賄賂で抱き込むと、戦いを終えた米軍が残した大量のM16自動小銃を手に入れる
内戦の裏で暗躍したユーリは、商才を発揮して戦う双方に武器を売りつけると莫大な金を手にするのだった
喜ぶユーリとヴィタリーは本格的に武器商人への道を歩み始めるが、インターポールのバレンタイン捜査官に目を付けられてしまい・・・



実在の武器商人達への取材を元に作られた社会派サスペン
ノンフィクションに基づくフィクションであり、主人公ユーリのモデルも実在の武器商人ヴィクトル・ボウトとされる

非常に不謹慎な言い回しを使うけど、
ダメ、ゼッタイが基本な戦争も多数の金が動くわけで、話題のオリンピックと同じように関係する業界にとってはビックイベントなんですよ
本作で取り上げられる武器兵器はもちろん、壊れた家屋や物資などそこに現れる経済効果は計り知れない
被害に目が行きがちだけど、確実に利益を得ている人達もいるわけで
それを理解してしまった主人公を通して社会の闇を描いた物語

戦争への多大な皮肉もあることから、製作時イラク戦争真っ只中だったアメリカでは資金繰りが出来ず、外国からの投資で制作費を賄ったという
それを象徴するような相当の皮肉が込められたラストも最高

戦争自体 歴史として語られることが多い日本では、その更に裏側を描いた本作は異世界のような非現実感さえ抱くけど、リアリティ溢れる描写が現実に引き戻してくれる構成
個人的に圧巻なのは冒頭のシーンで、一気に現実の怖さを描いた描写はなかなかのもの

武器を売り金を稼ぐが、戦争を望んでいるわけではないという主人公の複雑かつ達観した心情も見どころ

今なお各地で起こる戦争や紛争の裏側と、世界のシステムを皮肉たっぷり描いた毒入り映画
社会派映画では特にオススメ
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