こたつむり

ハッピーフライトのこたつむりのレビュー・感想・評価

ハッピーフライト(2008年製作の映画)
4.1
★ 真のプロフェッショナルは安全を運ぶ

あらま。これは想像以上に楽しい作品でした。
何よりも、嫌味がないから気持ちよく観ることが出来ました。これは、航空会社のスタッフに敬意を表した形で描いたからでしょうね。それに専門用語の一つ一つからも伺える製作者の本気度。ANAも協力したそうですから、説得力と迫力が違います。

しかも、出演者たちが豪華絢爛。
柄本明さんの台詞が無いとか、小日向文世さんの顔がマスクで隠れているとか、何とも贅沢な使い方。製作に亀山千広さんの名前があるから出来た布陣でしょうか。

ちなみに、配役的に美味しいポジションだったのが、田畑智子さんと時任三郎さん、それと平岩紙さんだと思いました。あと…こっそり書いておきますが…相変わらず吹石一恵さんは美しかったぁ(嘆息)。

ということで、全方位に向けて良い点ばかり。
…とは言い切れないのが残念なところ。
特に問題なのが、綾瀬はるかさん演じる《CA》が“物語の違和感”になってしまったことです。

確かに本作はコメディ。
多少は大仰な演出、演技は必要かもしれません。しかし、この作品が描いているのは航空会社に勤務する“プロフェッショナル”たち。物語を成立させるために“ミスを犯す”という描写が必要でも、そこには何かしらの理由を設けるべきだと思うのです。

例えば、手順を軽視して省略してしまったとか。不幸なタイミングが重なってしまったとか。プロとしての“スキル”があることを前提として、脚本を展開するべきなのです。

しかし、彼女が演じたキャラクタの場合。
接客のプロとは思えない発言と行動。さすがに“ドジでノロマな亀”として笑えるレベルではありませんでした。他の役者さんたちが適材適所で輝いていただけに…比較してしまうのも残念な限り。これは、他の女優さんが演じても同じ結果だったと思います。

まあ、そんなわけで。
厳しい意見も書きましたが、それでも素晴らしい作品であることは変わりません。特に“違和感”については、物語が進むにつれて薄くなりますので…肩が下がるのも中盤までの我慢(逆に言えば、終盤になると主演女優の出番が減る…ということなのですが)。

また、コメディ作品ですが笑いのツボは千差万別。なので、笑いに期待するよりも、トラブルに悪戦苦闘するスタッフたちを応援するスタンスで臨んだほうが楽しめると思います。
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