CHEBUNBUN

飛行士の妻のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

飛行士の妻(1980年製作の映画)
3.0
【飛行士の妻に恋をする】
※filmarks1000本登録記念!当投稿は作品レビューというよりかは、『飛行士の妻』という作品との思い出を語る自分語り投稿です。『飛行士の妻』のまともな感想は他を参照ください。

filmarks1000本登録記念なので、思い出の映画『飛行士の妻』の話をします。

ブンブンは、『飛行士の妻』が好きな女の子にメロメロだったことがあります。

出会いは大学生時代、当時映画館でアルバイトしていた私に「可愛い子が入ってくるよ」と知らせが入りました。ワクワクしながら、彼女の出勤を待つブンブン。そして彼女は現れました。人って恋に堕ちる時、時間がゆっくり進むものですね。145センチくらいの華奢で笑顔が美しい女性が入って来たのです。

それ以来、ずっと彼女のことしか考えていませんでした。彼女はどうやらフランス語ができるらしい。ということで「ボンジュール」とダル絡みをしたりしましたが、彼女は嫌な顔一つもせずにニコニコしていました。彼女と同じシフトの時は天に昇る気持ちでした。そんな彼女に「好きな映画は何ですか?」とベタな質問をしました。彼女はこう答えます。

「エリック・ロメールが好きなの。特に『飛行士の妻』が好きです。」

すぐさまTSUTAYA渋谷店に行き、『飛行士の妻』を借りました。ただ、当時のブンブンにエリック・ロメールは早かった。ストーカーするだけの話だし、結局飛行士って何っ?て感じだし、フランスの景色はお洒落だが、よくわからないという感じだ。流石はカイエ・デュ・シネマがベストテンに選ぶだけあると思いました。しかし、背伸びしたブンブンは彼女に「エリック・ロメールいいよね!『飛行士の妻』サイコーでした。」と答え、ラブコールをしたのです。

しかし、そんな彼女は半年ぐらいで辞めてしまいました。着物屋で働くとのこと。悲しい別れをし数ヶ月経ったある日、丁度ブンブンがフランス留学する2週間前に1通の連絡がありました。

「ブンブン、会わない?」

そう、彼女からの連絡だったのです!銀座のデンマークカフェでランデブーを交わした。すると、面白いことが次々と明らかになるではありませんか。

まず、ブンブンが留学するアンジェの大学に彼女が通っていたこと。そして、彼女はブンブンと同じ時期にフランスにワーキングホリデーすること。そして、、、誕生日が数日違いなこと。バーナム効果というのでしょうか?運命の赤い糸というのでしょうか?失神しそうになりました。

「フランスでまた会いましょう、アビアントー」

とフランス留学が楽しみになってきたのです。

忘れもしない2014年12月、自分の人生においてドラマチックなクライマックスを迎えます。まず、彼女がアンジェに来てくれました。そして、ブンブンはホストマザーを説得して彼女をホームステイ先に泊めました。1週間の滞在期間中、毎日のようにデートし、お洒落カフェに行ったり、ミニシアターで『ターナー 、光に愛を求めて』を観たり、一緒にホストマザーにスキヤキを振舞ったりしました。しかし、チキンなブンブン、告れ、告れと脳内の全細胞が語るのに、アンジェでは告れませんでした。

最後のチャンスは12/28にやってきた。スイスバカンスからパリに帰還したブンブンに彼女がまた会ってくれました。これが最後のチャンスです。意を決して、パリのメトロで「好きです!」と告白しました。

次の日、LINEが届いていました。

「友だちとしてならいいよ」

まあ、そりゃそうだ。3歳年上、社会人の彼女がブンブンとまともに付き合うことはないのだから。

こうして失恋を引きずりブンブンと彼女の物語は幕を閉じた、、、かのように思えた。実はここから戦慄の物語へと発展していくのを当時のブンブンは知る由がなかった。

2年後、ブンブンはIT企業に就職することとなり、大学最後の生活を謳歌している矢先、1通のLINEが届いた。

「久しぶり、東京に戻ってきたから会わない?」

嫌な予感がした。なんだろう、この背筋が凍る思い。彼女にファムファタールの残像を抱きつつ、会うことにした。本能には逆らえないという奴だ。

「結婚したの」

彼女から薄々感づいていたセリフを聞いた。どうやらワーキングホリデー時代に知り合ったフランス人と結婚するとのこと。そして、披露宴の音響を頼みたいとのことだった。美女からの頼みは断れないブンブン。承諾したのだが、いざ披露宴会場に着くと精神血まみれになりました。なんたって知り合い皆無の披露宴の片隅で音響をいじり、華を観るのは惨めに思えるからだ。しかも、フランス人の相手がイケメン過ぎて、もしブンブンがウェルテルであるならばとっくに自殺しているレベルだ。

もう、よそう。会うのは、、、

だが、ブンブンは弱い弱い男でした。ファムファタールの誘いによって更なる地獄を観たのです。

先日、彼女から赤ちゃんが誕生したと連絡を受け会うことになりました。有給を取って、マダムの街広尾に降り立ちました。そこには可愛らしい赤ちゃんを抱える彼女の姿がありました。心臓バクバクになりながら、思い出話しに華を咲かせる。カフェでは、フランス映画の話で盛り上がり楽しいひと時を過ごしました。そして、ブンブンは赤ちゃんにとミッフィーの絵本、そしてぬいぐるみをあげたところ、

「ブンブンに渡したいものがあるから、うちこない?」

と言われました。まあ、行きますよね。

すると、玄関に謎の男が立っていました。彼女の兄とのこと。フィリピン帰りで立ち寄ったらしい。気まずいなと思いながら、彼女の家に入り、お土産を受け取る。すると、彼女から、

「もうすぐ、友だちが来るのだけど聴く?」

と言われました。ミュージシャンなのかな?あるいは着付け教室の人かな?まあ、貴重な体験だし付き合うかと承諾するブンブン。

しかし、そこへ現れたのはずんぐりむっくりしたおじさんでした。彼女の兄とはビジネスパートナーで輸入業をしているとのこと。高い輸入酒のサンプルらしきものを取り出しながら二人はビジネストークを始めます。ブンブンは名刺交換しながら、そんなずんぐりむっくりなおじさんの仕事を聞き出します。

すると彼女が、こう語りました。

「アムウェイって知ってる?」

一瞬、何を言っているのか分からなかった。正確には、脳が理解を拒絶していた。

アムウェイとは、渋谷にでっかいビルを構えるマルチ商法まがいの巨大組織。ネットワークビジネスという、友人を焼畑農業的に食い物にする悪魔の商売だ。ブンブン、アルバイトでアムウェイ内部に潜入しているだけに、胡散臭いことは十分分かっている。

しかし、今ブンブンは気づいた。袋のネズミだと。これはカモられると。ずんぐりむっくりと兄はどうやら親ネズミらしく、アムウェイ会員の出会い場を提供する為にBBQ屋をやったり、フィリピンに支店を作っているらしい。そして、いかに自分が全然稼げない状態から、成功していったのかを語り始めるのです。

ブンブンは悲しさと恐怖で頭が真っ白になりながらも、顔には弱さを出さないようにして必死に返答しました。

すると、「あれやろう!」とずんぐりむっくりは彼女に指示を出します。

彼女は洗剤を取り出し始めるのです。そう、かの有名な《実験》です。キュキュットとアムウェイの洗剤を比べて、後者の質が高いことを説明し始めます。もう頭真っ白なブンブンは、汚れのサンプルとしてガラスに広げられた塩に対して、

「ピエール瀧ですかね?」

とトンデモジョークを言ってしまったりします。帰らなきゃ、帰らなきゃと思いつつも、人間極限状態では動けません。絶望の淵に立たされました。

ずんぐりむっくり、その後もずっとアムウェイの凄さについて語ります。そして、「お酒は強いかい?」と訊いてきます。

うっかり、「めっちゃ強いです」と答え、ハッとしました。目の前に高い酒があるのです。これは酒で洗脳するのではと思い、「そういえばお三方ミーティングでしたよね。私は去ります。」と言い、逃げることにしました。ずんぐりむっくりは彼女に「あれっ渡してあげなよ。アムウェイグッズ」という。

しかし、彼女は「もうあげたよ」と語るのです。もらった記憶がないぞ!と思っていたら、玄関で渡されたギフトの中に、アムウェイの歯ブラシセットが入っていたのです。背筋がゾーーッとしました。

好きだったあの子の正体はアムウェイ一家だったというショックに立ち直れず、行きつけのバーのマスターに慰めてもらいました。

恐らく、彼女や兄、ずんぐりむっくりは親ネズミとして成功するでしょう。ビジネスとしてアムウェイは成功しているのだから、それには口出しはしません。時は資本主義時代なのだから稼いでなんぼだ。しかし、信仰上の都合でブンブンはもう彼女には会えません。

今いるステキなカノジョに愛を捧げ、彼女との縁を切ろうと決断しました。

以上、ブンブンのノンフィクションエッセイ『飛行士の妻に恋をする』をfilmarks1000本目の投稿とさせていただきます。これからもフォロワーさん、チェ・ブンブンをよろしくお願いします!
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