中庭

コッポラの胡蝶の夢の中庭のレビュー・感想・評価

コッポラの胡蝶の夢(2007年製作の映画)
4.6
斜陽に染まる、時間概念の著しく乱された虚ろな空間が続く前半と、暗いブルーと僅かな自然光を見事に組み合わせた後半の若々しい照明へ変貌してゆく映像の詩的な設計が凄まじい。薔薇の出現の処理のあっけなさに狐につままれたような気分になったかと思えば、同じ手法で最後に現れたときには迫力を感じるし、落雷に引き寄せられるように浮かび上がる教授の体の燃え盛り方は終盤まで残像として脳裏に焼き付き、それがこの数奇な人生の主題を支え続けもするのだから、何も言えなくなってしまう。生き埋めの洞窟の発破を固定カメラでとらえたショットのサイズや、女と再び出会うU字の道の撮り方、幻覚に陥るときの抽象的なモンタージュなど、コッポラのフィルモグラフィーを一瞬ずつ想起させるような演出がいたるところに点在する。
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