Mikiyoshi1986

海軍横須賀刑務所のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

海軍横須賀刑務所(1973年製作の映画)
3.6
60年代の東映時代劇・任侠映画を牽引した「将軍」こと山下耕作監督。
本日12月6日は彼の十九回忌に当たります。

70年代に入り、東映が実録やくざ路線に切り替えると山下の手腕はみるみる衰えていくわけですが、
そもそも彼の作る映画は様式美に彩られ、勧懲思想を基に崇高な精神性をひたすら描いてきた男。
臨機応変な深作や中島と違い、彼にとってドロドロした実録路線は残念ながら不適の極みだったと云えるでしょう。

そんな東映がまさに任侠映画から実録路線へシフトしようとしていた過渡期、「兵隊やくざ」の勝新太郎を主演に迎えて制作された任侠+刑務所の痛快娯楽作。
「大映」の勝新が兄・若山先生の地盤「東映」作品に初出演した唯一の映画であり、文太さんと初共演を果たした唯一の作品でもあります。

東映の任侠+刑務所モノといえば石井輝男&健さんコンビの「網走番外地」シリーズが有名ですが、本作の脚本は石井輝男が手掛け、
海軍訓練所と海軍刑務所の二部構成で体制への反骨精神を加速させていきます。

素行の悪い「カムチャッカの兼」こと志村兼次郎ら新兵たちが海軍訓練所でしごかれまくり、様々なハチャメチャ騒動を繰り返すわけですが、
ひょんなことから昭和天皇の義兄・久邇宮朝融王と兄弟分になるなど、いかにも石井輝男らしいハチャメチャすぎる脚本も良しです。

腐った海軍機関の理不尽な暴力と軍国主義の精神論に対する反逆行為は、他でもない戦時中を生きた者たちの怒りの代弁であり、また安保闘争に身を投じた戦後の若者たちの怒りを煽動するようなエネルギーも込められています。

ガチ嘔吐や肥溜め潜水など勝新の役者魂には驚かされる一方、
勝新の「おまわり」や松方兄貴の「早くしてよ」など笑いどころはとことん爆笑必至です。
Mikiyoshi1986

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