このレビューはネタバレを含みます
父や母、家庭(環境)というある種の呪縛に苛まれ苦しみ
必死に反抗しながら己を構築していくという作業は
大なり小なりきっと多くの人が経験する。
子供はいつだって親を悩ませる種だというけれど
親は子供を苦しめる種でもある。
それがものすごく立派で尊敬に価する親だとしても。
幼いころから見聞きしていた事や強烈な経験は
自分がいくら嫌悪しても恐ろしいと思っても
身体に深く染みついて剥がれない。
根こそぎ消し去るのはかなり難しい。
現実の中では檻、幻覚の中では母の生贄。
常になにかに囚われ続けるという絶望。
死というものをこれだけ有り難く感じる作品もなかなかない。
これは自我との闘いの物語。
この美術と演出は唯一無二。