デニロ

怪談雪女郎のデニロのレビュー・感想・評価

怪談雪女郎(1968年製作の映画)
3.5
1968年製作公開。脚本八尋不二。監督田中徳三。何で観に行ったんだろうと劇場のチラシを読み返す。耽美的怪奇ロマンの傑作/夢幻的キャメラワーク/雪の表現が素晴らしい、だった。

物語は、仏師の下にひとりの女が現れて結ばれる。男の名は与作。他に名前はないのか。女はゆき、という。ゆきは、与作の子を生し、ふたりはつましく暮らす。ある時、その土地の地頭がゆきに横恋慕し与作の手から奪い妾にしようと企む。

国分寺から観音像を依頼される与作だが思うままには進捗しない。そのような状況の中、地頭は京から有名な仏師行慶を呼び与作と競作することになる。出来上がった行慶の観音像を見た国分寺の座主は、慈悲のこころが欠けている、この観音の眼では祈ることは出来ない。それを聞いた与作も慈悲のこころをあらわす眼に捕らわれる。

地頭は思うままにならぬゆきを自分のものにするため、遂に部下たちに命じゆきを拉致する。もはやすけこましの元祖に成り果てている。が、ゆきの正体はその名の通り雪女。地頭とその部下たちは雪女の怒りを買い凍死する。

この地頭が物語のアクセントになっているのだが、そのほかの流れは民話的な雪女のお話。

与作が口走ってしまう雪女の話にゆきは約束を違えたらどのようになるかわかっているはず、与作を殺さなくてはならぬわが身を呪うのだが、不図、幼いふたりの鎹であるわが子に思いを寄せる。この子を頼みます。果たしてその眼には慈悲の光が湛えられていたのです。

ゆき/藤村志保、与作/石浜朗。

角川シネマ有楽町 大映創立80周年記念映画祭Road to the Masterpiecesにて
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