スローモーション男

どん底のスローモーション男のレビュー・感想・評価

どん底(1936年製作の映画)
4.8
 めちゃくちゃ好きな作品だ!

ジャンルノワールがゴーリキーの戯曲をフランスを舞台に映画化。

本当に素晴らしい。
貧しい木賃宿で暮らす人々の物語。特に泥棒ペペルと落ちぶれた男爵に焦点を置き、物語に柱を作ったのが良かったです。
この二人がポーカーと酒だけで意気投合してしまうあたり、その後友情をはぐくむのが良いですね。階級を越えた関係になり野原に寝そべる。
それから姉妹。この対照的な二人も物語の中心にいます。
あと木賃宿の住人たち。どん底の生活をしていながらも常に明るく楽しそうにしている姿。多分、一生ここから出られないのに明日を夢見ている。
すべての人が愛おしい。

それを90分で描ききるルノワールの手腕にも驚く。
長回しも素晴らしい。
「大いなる幻影」で彼の作品は好みだなと思っていましたが、もっと好みでした!

ラストシーンの暖かさと悲しみを同時に持ってくる当たりはいい意味でイヤらしい。人には人それぞれの生き方がある。
良かった-。