ペイン

美しき諍い女(いさかいめ)のペインのレビュー・感想・評価

4.7
カンヌ映画祭グランプリを受賞したフランスの名匠ジャック・リヴェットによる1991年の作品。

映画芸術というものが持つ本来の豊かさ、あるいは良い意味での作り手の傲慢さに満ちた名編。

4時間あるが、退屈する瞬間はない。こんなことを言うのもあれだが、本作を退屈と感じる人は恐らくポップコーンムービーの見過ぎで、“行間を読みながら映画を観る”という感覚が麻痺しているのだと思う。それくらい本作における人物の心情描写や、ショットの数々は素晴らしく、無駄がない。

話の筋は極めてシンプル。
先月亡くなられた名優ミシェル・ピコリ演じる主人公の画家フレンホーフェルと、アナ・デ・アルマス風美女のエマニュエル・ベアールが演じるモデルのマリアンヌの怒濤の3日間を中心に、またその周りの翻弄される人々を描く。


劇中の中盤、モデルのマリアンヌに
“君を解体する。肉体を脱がせて、骨格をあらわにする。そして君の内面を見たいんだ”と言って、とにかく骨がヒン曲がるようなきっついポーズを次々取らせる主人公の画家。(※劇中の主人公曰く過去にも沢山のモデルを脱臼させてきたとかw)

その後も主人公画家はモデルのマリアンヌに向かって“からだ全体だ。部分などいらない。君の中にある血や炎や氷をつかみ出す!この見かけの内面にあるものを知りたいんだ。胸も、腹も、太ももも、ケツも要らん。銀河や潮の満ち干、ブラックホール…天地創造前の混沌…それを君に求めている。見えないものを外に引き出してキャンバスに刻んでやる!”…などと正直、常人には訳のわからないことを連発する(笑)


この様はなんだかある種の格闘技映画を観ているようでもあり、このアトリエでの2人の怒濤の3日間は、ドラゴンボールでいうところの“精神と時の部屋”での悟空とベジータの修行のようでもある。お互いを高め合い、限界突破を図っていく。(※劇中のエマニュエル・ベアールの大きな乳輪とお尻は芸術的!)


観たら次の日には忘れてしまいそうな、頭空っぽで観られるアクション超大作も好きだし良いのが、本作のような人間の内面に深く切り込んでくる作品こそ私は映画館の暗闇に身を沈め、観るべきと思う。
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