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友だちのうちはどこ?のRのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
4.1
ちょっといつもと違う雰囲気の映画見たいなーと思い、めちゃくちゃ久しぶりにイラン映画を見てみました。コケルという田舎の村を舞台にした、シンプルかつリアリスティックなストーリーで、ど田舎出身のボクは、自分の幼少期を思い返してるような心地がしました、ただ、本作とは違って、大人たちはみな僕のことをとてもとても可愛がってくれてましたが。ストーリーは学校の教室のドアから始まります。主人公はジャケ写の少年アハマッド君。隣の席に座ってる男の子ネマツァデは宿題をノートでなく紙切れにやって来てて、ノートにやれと言っただろ、と教師に叱られ、同じ注意をされるのこれで3回目だから、次に同じことが起こったら退学だぞ! と言い渡される。放課後、アハマッド君がおうちに帰って、さて宿題をやろうとすると、なんと、自分のカバンの中に、全く同じ見た目のネマツァデのノートがあるではないか! 間違って持って帰って来てしまった! 今すぐ返しに行かねば! 退学になってしまう! お母さんに事情を説明しようとしても、いや、お前が先に宿題を終わらせないと遊びには行けないよ、の一点張り、全然はなしを聞いてくれない。けど、なんとかうまくこっそりお家を抜け出し、ネマツァデが住んでるらしい隣の村に辿り着くんやけど、ネマツァデの家はどこですか?ときいても、だれも真剣に相手してくれない。挙げ句、ここらに住んでるの人らは皆ネマツァデだぇ、とのこと😂 そういえば僕の出身地でも周りみんな同じ苗字でしたわ笑 果たしてアハマッド君は無事ノートをネマツァデに届けることができるのか⁈ というこの上なく素朴な話で、主人公のアハマッド君は、ぜんぜん腕白さとか反抗心を感じさせない、ものすごく素朴で素直で真面目な良い子。彼の目を通して描かれる大人たち、特に権威主義志向のお爺ちゃんの存在は、非常に興味深い。子どもとは、なにが何でも、大人の言うことにはすぐに従って、さっと行動すべきだ、と語り、要りもしないタバコをアハマッドに取って来させようとする。そして、アハマッドくんが言おうとすることには一切耳を傾けない。「目上の人の言うことは絶対的に敬って従え」的な教育法ってイランにも存在するんすねー。個人的には、子供に思考の停止を強要するようなこういう接し方には全く賛同できないし、見てて気分悪くなる、かといって、メリットクラシーを信じているわけでもない、僕的には、アハマッドくんのような自然な人間性の発露、大人のバイアスによって汚されていない子どもの純粋な優しさや真摯さをこそ支持したい。アハマッド君も、この環境のなかで生きて年をとっていくと、結局この爺さんみたいな人になってしまうかもしれないし、この爺さんも、子どもの頃は、アハマッドのような人だったに違いない。アハマッド君の中から湧き上がったピュアな気持ちを、大切にする大人たちが増えるだけで、世界は今より随分マシになるのではないだろうか。そういう思いを込めて、キアロスタミ監督は本作を作り上げたのかもしれない。ほんで、その後はまさかのおっさんチェイスというアクションシーン! 何となく展開は読めるけど、それでもそれまでのノンビリした語り口と比べるとスリリング! からの今度は、時代の変化とそれに取り残される者の悲哀を、ほのぼのとした交流のなかに浮かび上がらせ、そして、吹き荒れる風のごとき夜を過ごしたのち、アハマッド君が辿り着くゴールとは!!! しっかり最後までいろいろ考えさせられながら、アハマッド君の深い深い優しさに、じっくりと癒されました。アハマッドを演じたババク アハマッドクール君は、演技こそちょっと硬いですが、下手に演技が上手な子役とは異なる、つぶらな瞳に溢れる切実な思いが素晴らしかった。あと、友だちのネマツァデを演じたアハマッド アハマッドプール君、泣きの演技うますぎじゃね? カウリスマキ監督、どうやってあんな演技を引き出したのか。ホンマに泣かしたようにしか見えない。そして、ラストシーンの子どもたち、みんなの顔を見てください。このラストシーンにこそ、キアロスタミ監督の痛切な思いが込められてるのではないか、と感じました。最後に、僕にとってのイラン映画TOP3で、感想文を終わりにしたい。別離、桜桃の味、運動靴と赤い金魚。ズバリこれです。この三つはやっぱ格別です。
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