つかれぐま

友だちのうちはどこ?のつかれぐまのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
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表現の規制が厳しい国の映画監督は、当局の目をすり抜けるべく、あえて単純なプロットに多くの暗喩を含める。このイラン映画もそういう作品だ。

ベン・アフレック『アルゴ』で描かれたイラン革命の直後。「革命」といってもそれは宗教革命で、古いイスラムの教えに回帰する=文化的には後退の側面が強い。ノートに書くことに固執する教師は「形式主義」、父権を振りかざす祖父は「家長制」の暗喩。

この「革命」が近代化=電化や家電製品の普及の遅れも招く。お陰で薄暗い中で大人たちは家事労働に縛られ、子供の声に耳を傾ける余裕がない。不幸の連鎖だ。

最後に登場する父親。
どんな厳しい男かと思えば、一言も台詞はなく、おそらく他国の情報を得ようとラジオにかじりつく。彼の思いと子供たちの瑞々しさが一筋の希望。女の子の姿がないのが寂しい。