Ricola

友だちのうちはどこ?のRicolaのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
3.8
こちらも小津の大ファンである、アッバス・キアロスタミの作品。
4年ほど前に授業で鑑賞したが、良さを理解できなかったので、再挑戦してみた。

主人公の少年アハマッドを含め子どもたちには、映画の撮影であることさえ伝えられていないという。
担任の先生は撮影の少し前から、本当の先生であるように仕込まれていたという徹底ぶり…。
そのおかげもあって、子どもたちの自然体な表情や動きをとらえることができているのだろう。


先生に、ノートに宿題をやってこなかったことを注意されて泣いてしまう生徒。
アハマッドは、その様子を隣りで見ていてかなりびびってているようだ。

アハマッドは帰宅したら、家の手伝いをして宿題をして大忙しである。
しかしそんな中でもあの友人のノートだけは本人の手元に返さねばと、なんとか親を説得しようとするが全然聞いてもらえない…。
友だちのノートも持って帰ってきてしまったと気づいたときのピリッとした表情
がかわいい笑
「ヤバい」というのが表情からだけでもよくわかる。どんなに何度も切実な表情で訴えても、お母さんは聞き入れてくれない。そのどんどん不安感が加速するアハマッドの表情は、かわいそうと思いながらもかわいく見えてしまう。

また、生活音というか環境の音がとても際立って聞こえるのが印象的である。
ポンプを押して水を出す音、洗濯物の水気を切って物干し竿に干す音など…。
歩く鶏の鳴き声など鮮明に聞こえる中、ボソボソと彼の訴える声が聞こえる。
このコントラストも面白い。

文字通りジグザグ道を歩いて友だちの家へと向かう。道中で出会う人々に、その友だちの家について訊ねていく。
町や住宅地の様子がそのまま映し出されていく。
そんななかでよく見かけるのは干してある洗濯物である。
これを小津へのオマージュとやはり思ってしまう。
アハマッドの家の洗濯物はもちろん、人の家に干してあるズボンから、友人の家ではないかとヒントを得たりするのである。

子供の方が大人よりも、子供であるアハマッドに協力的であるという構図も印象的だった。
彼の世界にはもちろん大人もいるが、子どもとの境界線をそういった点で感じる。

子どもの純粋無垢な心からくる、ありのままの表情を引き出すために現実を操る心意気と、その操作よって生み出された生き生きとした子どもの言動を見つめるキアロスタミのあたたかな眼差しの見守る中で、アハマッド同様に一喜一憂させられた。
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