LalaーMukuーMerry

友だちのうちはどこ?のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
4.5
子供が主役のとても良い映画でした。珠玉の作品とはこういうのを言うのだろう。「運動靴と赤い金魚」(1997)も素敵な作品でしたが、あれもイラン映画でしたね。これはその10年前の作品。絶対影響していると思う。
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昭和の終わり頃のイラン、首都テヘランの近く、コケルとポシュテという小さな古い町が舞台(google mapにも載ってなかった)。コーランの教えは厳格で、親の言うことを子は聞かなければいけない、先生のいいつけも守らなければならない。きっとコーランにも「子は宝」的な一節はあるのだろうけれど、大人は自分たちの都合の良いことだけを子供に強いて、子どもの自由な振舞いは許さなかった。それが当たり前の昔からのやり方だとみんな思っていた。それはイランだけではなく、日本でもヨーロッパでも同じこと。
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そんな環境でも素直で良い子は自然に育つ。主人公のアハマド君(8才)は、小学校の隣の席の友だちのノートを誤って持ち帰ってしまった。このノートがないと友だちは宿題ができず、明日先生にひどく叱られて、学校をやめさせられるかもしれない。
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アハマド君は、母親の目を盗んで家を出て、友だちにノートを返そうと丘の向こうの隣町まで走っていく。でもいったことがない所だ。見知らぬ路地で出会った大人たちに家を尋ねながら行くのだが・・・
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ほんとにタイトル通り、おうち探しだけの映画なのだけれど、simple is best! 凄~く引き込まれる魅力的な作品でした。白い壁の建物が所狭しと続く古い町。扉や窓に同じものは一つもない、壁の穴に合わせて木の扉や窓をつくっているから。白い壁に挟まれた坂道だらけ階段だらけの狭い狭い路地。そこを通るのは人だけでなく急に牛が現れたりする、ヤギの群れも通る。出会った大人たちは小さなアハマド君の言うことを全然真面目に聞こうとしない、それどころか自分のことばかりしゃべるのが、なんだか笑える。でもアハマド君は大人を立て、静かに聞いてあげる。こんなんで友達の家にたどりつけるのだろうか? 日が暮れてきたよ・・・
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民族音楽のBGMもいいし、映像もいい。何よりラストのほっこりが最高にええ感じやった。押し花もちゃんとあったしね。
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監督のアッバス・キアロスタミはイランの映画監督の草分け的な存在の巨匠。本作品とそれに続く「そして人生は続く」(1992)、「オリーブの林をぬけて」(1994)の三部作、これは見なくっちゃと強く思いました。彼は小津安二郎のファンらしい、それも嬉しい。