カズナリマン

友だちのうちはどこ?のカズナリマンのレビュー・感想・評価

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
4.7
大人ってサイテーだなっ!

ひっさびさに見ました、イランの巨匠アッバスキアロスタミ監督の出世作!

こんな話だったな…というのは覚えていたものの、ディテールを忘れていたので見直したら…

いやー、ほんと、こどもの純真(価値観)って素晴らしい!

お話は…
「明日宿題忘れたら退学だからな!」と先生に脅かされた友達、ネマツァデ君のノートを間違って持って帰ってしまったアハマッド少年。

「今日ネマツァデ君に届けないと、退学になっちゃう!」

そう考えたアハマッドは遠くに住むネマツァデ君にノートを届けようとしますが、そこに様々な都合や悪知恵や間違った価値観を育んだ大人たちが立ちはだかります…

「退学になってしまう友達にノートを届けたい」

これだけのことに、なぜ大人たちは反対するのか?

なぜアハマッドを信じてくれないのか?

なぜ用もないのに引き止めるのか?

本当に納得いかない大人たちの言動!!

でもわかるんだな…これが大人なんだなぁ。悲しいことに。

子供のいうことより、経験多い自分の考えの方が優先されるべき!と常に考えてしまう。それを極端な形で見せてくれるのが本作です。極端ではあるけれで、まったくその通り。

大人の端くれとして、こうべを垂れ、正座をして(嘘)、ポテチも食べず(嘘②)、反省しきりで鑑賞しました。

あまりに非協力で分からず屋な大人たちが多くて、これが「はじめてのおつかい」なら、間違いなくアハマッドのエピソードはお蔵入りになっていたでしょう。

でも救いは…

アハマッドもしつこいゾ!ってこと。

何度も「宿題やってからよ」とか「パンを買ってきてから」、「お父さんに叱ってもらうから」など恫喝を繰り返す母に向かってロボットのように「トモダチニノートヲトドケナキャ」と繰り返すアハマッド。

「あぁ、そんなに言ったら母親が意地になっちゃうよ!」という大人(自分)の心配をよそに、リピートアフターミー!

母親という敵(大人)をくぐりぬけ、第一ステージ突破した後も、「こどもはしつけが大事」という武器を振り回す第二ステージのボス(ジジイ)に「友達に届けなきゃ」の一点張り!

そのあとの第三ステージの「鉄ドアおじさん」との攻防!ここは手に汗握ります!縁もゆかりもない鉄ドアおじさんの「ノートを貸せ」にハラハラドキドキ!ネマツァデ君のノートを奪われ、一巻の終わりか??と目を覆いました。ええ。マーターズの後半より目を覆った回数は多いかもしれません!

そして最後に登場するラスボスの正体とは?!?

いやーー、ほんと、最後の最後までみせてくれるんです、この「友だちのうちはどこ?」。

なんだかサスペンススリラーみたいな薦め方になってしまいましたが、遠からず、です。

でも、自分が本当に言いたいことは…

この映画でデビューとは、キアロスタミ監督、鮮烈過ぎる!!

ということです。

ストーリー以外にも、素人キャスティングやらジグザグランニングやら、見どころ満載!

さらに、サイテーなヴィラン的大人たちの執拗な描写と来たら!

閻魔様が本作をみて、先生を演じた役者を地獄に突き落とさないことを祈るばかり。

それくらい、大人たちのサイテーさはしつこく、描写されます。

いやー、ほんと、大人ってサイテーな生き物ですね!

というわけで、まだ見てない方も一度見た方も、「友だちのうちはどこ?」を見て大人であることを恥じましょう!

全力でオススメします!

※うん十年前に映画館でみたときも上とほぼ同じ感想だったのですが、さらに大人になって鑑賞した今回、新しく思ったのは…

ビジネスにおける交渉ごとで、インドや東南アジアの方々は「交渉がしぶとい」という噂をよく聞きます。

アハマッドや大人たちがしつこかったのは、もともと東南アジアの血に眠る「しぶとい交渉術」のたまものであって、日本人である自分はあれを「しぶとい」とか感じるけど、もしかしたらイランの客は「ま、普通だよね」と思っているのではないかしら…ということ。

いや、たぶん自分の錯覚ですねw